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October 4, 2001 Vol. 345 No. 14

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急性冠症候群の患者における B 型ナトリウム利尿ペプチドの予後的価値
The Prognostic Value of B-Type Natriuretic Peptide in Patients with Acute Coronary Syndromes

J.A. DE LEMOS AND OTHERS

背景

脳型(B 型)ナトリウム利尿ペプチドは,主として心室の心筋で合成される神経ホルモンの一種である.この神経ホルモンの循環血中濃度は,壁内心筋梗塞の患者においては,独立した予後情報を提供することが示されているが,ST 部の上昇が認められない急性冠症候群の患者については,データがほとんど得られていない.

方 法

心筋梗塞における不安定冠症候群–血栓溶解の患者を対象としたオルボフィバンの第 16 試験(the Orbofiban in Patients with Unstable Coronary Syndromes–Thrombolysis in Myocardial Infarction 16 study)の患者 2,525 例について,虚血性症状が発現してから平均(±SD)で 40±20 時間後に採取された血漿検体で,B 型ナトリウム利尿ペプチドを測定した.

結 果

B 型ナトリウム利尿ペプチドの試験開始時の濃度は,30 日目および 10 ヵ月目までの時点の死亡,心不全,および心筋梗塞のリスクと相関関係があった.補正なしの死亡率は,試験開始時の B 型ナトリウム利尿ペプチドの濃度の四分位点の範囲が高くなるにつれて,段階的に上昇していった(p<0.001).この関連は,ST 部の上昇を伴う心筋梗塞の患者(p=0.02),ST 部の上昇を伴わない心筋梗塞の患者(p<0.001),および不安定狭心症の患者(p<0.001)の部分集団でも,有意なままであった.死亡の長期リスクの独立した予測因子で補正すると,B 型ナトリウム利尿ペプチドの第二四分位点,第三四分位点,および第四四分位点の範囲における 10 ヵ月死亡のオッズ比は,3.8(95%信頼区間,1.1~13.3),4.0(95%信頼区間,1.2~13.7),および 5.8(95%信頼区間,1.7~19.7)であった.B 型ナトリウム利尿ペプチドの濃度はさらに,10 ヵ月目までの時点における心筋梗塞の初発あるいは再発のリスク(p=0.01),および心不全の初発あるいは悪化のリスク(p<0.001)とも関連していた.

結 論

虚血性症状が発現してから数日以内に得られた B 型ナトリウム利尿ペプチドの1 回の測定が,急性冠症候群のスペクトル全体にわたるリスクの層別に利用できる予測的情報を提供する.心臓における神経ホルモンの活性化は,急性冠症候群後に死亡のリスクが高くなっている患者に共通した特徴なのかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 345 : 1014 - 21. )