November 1, 2001 Vol. 345 No. 18
股関節部骨折手術後の静脈血栓塞栓症の予防のためのエノキサパリンと比較したフォンダパリヌクス
Fondaparinux Compared with Enoxaparin for the Prevention of Venous Thromboembolism after Hip-Fracture Surgery
B.I. ERIKSSON, K.A. BAUER, M.R. LASSEN, AND A.G.G. TURPIE
股関節部骨折の手術は,最新の血栓予防治療の実施にもかかわらず,静脈血栓塞栓症の高リスクを伴っている.合成五糖類のフォンダパリヌクス(fondaparinux)は,このリスクを低下させる可能性のある新規の抗血栓薬である.
二重盲検試験において,大腿骨の上部 1/3 の骨折に対して手術を受ける予定に なっていた 1,711 例の連続した患者を,術後に開始するフォンダパリヌクス 2.5 mg 1 日 1 回の皮下投与か,または術前に開始するエノキサパリン 40 mg 1 日 1 回の皮下投与のいずれかを,少なくとも 5 日間実施する治療に無作為に割付けた.有効性の主要転帰は,術後 11 日目までに発生した静脈血栓塞栓症であった.静脈血栓塞栓症は必須検査として実施した両脚の静脈造影法よって検出された深部静脈血栓症,記載された症候性深部静脈血栓症,または記載された症候性肺塞栓症と定義した.安全性の主な転帰は,大出血および全死因死亡であった.追跡調査の期間は 6 週間とした.
11 日目までの静脈血栓塞栓症の発生率は,フォンダパリヌクス群が 8.3%(626 例中 52 例),エノキサパリン群が 19.1%(624 例中 119 例)であった(p<0.001).フォンダパリヌクスによるリスクの低下は,56.4%(95%信頼区間,39.0~70.3%)であった.死亡あるいは臨床的に重要な出血の発生率には,2 群間に有意な差は認められなかった.
股関節部骨折の手術を受ける患者において,フォンダパリヌクスは,エノキサパリンよりも,静脈血栓塞栓症の予防に有効であり,安全性は同程度であった.