November 1, 2001 Vol. 345 No. 18
入口監視の撤廃 ― ある民間健康保険医療団体において成人に専門医への受診機会を開放したことの影響
Leaving Gatekeeping Behind — Effects of Opening Access to Specialists for Adults in a Health Maintenance Organization
T.G. FERRIS, Y. CHANG, D. BLUMENTHAL, AND S.D. PEARSON
入口監視とは,プライマリケア医による専門医への患者紹介の事前承認のことを指す.多くの医療保険では,この入口監視を,医療費の管理と医療を調整するための 1 つの必須手段とみなしているが,数多くの患者と医師はこれに異議を唱えている.
ハーバードコミュニティ医療保険(Harvard Community Health Plan)としてこれまで知られていた,大規模な複数の専門診療科が連携したグループ診療であるハーバード先駆医学連盟(Harvard Vanguard Medical Associates)が,1998 年 4 月 1 日に,25 年以上にわたって実施されてきた入口監視制度を撤廃した.われわれは,この専門医への受診機会を開放したことによる,成人のプライマリケア医または専門医への受診に対する影響について調べた.無作為に抽出した 10,000 例ずつから成るコホートを対象として,入口監視の撤廃前 3 年間および撤廃後 18 ヵ月間における 6 ヵ月間ごとの受診について分析した.
成人のプライマリケア医への受診は,入口監視の撤廃前および撤廃後のそれぞれにおいて,平均で,6 ヵ月間当り 1.21 回および 1.19 回であった(p=0.05);専門医への受診の平均回数は,入口監視の撤廃前および撤廃後のどちらにおいても,6 ヵ月間当り 0.78 回であった(p=0.35).全受診に占める分析に加えた専門医への受診の百分率には,ほとんど変化は認められなかった(入口監視の撤廃前 39.1%,撤廃後 39.5%).専門医への全受診に占める分析に加えた専門医への初診の百分率は,24.7%から 28.2%に増加した(p<0.001).整形外科医および理学療法士や作業療法士への受診の回数に,軽度の増加がみられた.腰痛によって初診で専門医を受診した割合は,26.6%から 32.9%に増加した(p=0.01).
ある複数の専門診療科が連携したグループ診療において,入口監視を撤廃してから 18 ヵ月目までに,成人による専門医療サービスの利用に実質的な変化を示す証拠はほとんど見付けられなかった.