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August 2, 2001 Vol. 345 No. 5

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ある大家系における原発性肺高血圧症の一因としての骨形成因子受容体 II 遺伝子の突然変異
Mutation in the Gene for Bone Morphogenetic Protein Receptor II as a Cause of Primary Pulmonary Hypertension in a Large Kindred

J.H. NEWMAN AND OTHERS

背景

原発性肺高血圧症のほとんどの患者は,散発性であり,遺伝性ではないと考えられている.この疾患が臨床的に顕在化するのは,家族性原発性肺高血圧症の遺伝子を保因している人の 10~20%にすぎないことから,われわれは,見かけ上は散発性原発性肺高血圧症と思われる患者の多くは,実際には家族性原発性肺高血圧症であるのかもしれないという仮説を立てた.

方 法

20 年以上にわたる研究において,家族性原発性肺高血圧症に襲われた家族の登録を 67 組にまで伸ばした.患者紹介,詳細な家族歴,および家系図間の相互関係から,五つの亜家系に共通する祖先を発見した.この家系に属する何名かにおいて,骨形成因子受容体 II(BMPR2)をコードしている遺伝子の突然変異の評価を行った.この遺伝子の突然変異は,最近,家族性原発性肺高血圧症を引き起すことがわかってきている.

結 果

別々に同定された五つの亜家系を結び付けた.これらの五つの亜家系には,7 世代にわたる 394 名が含まれ,1800 年代半ばにこの突然変異の創始者となった 1 組の夫婦にまでさかのぼるものであった.この家系の 18 名が家族性原発性肺高血圧症と診断されていたが,そのうちの 12 名は,はじめは散発性の肺高血圧症と考えられていた.この 18 名のうちの 7 例は,最初,その病態から他の心肺疾患と誤診された.家族性原発性肺高血圧症が発症した 6 名と,この突然変異を保因している恐れのある 10 名のうち 6 名に遺伝子型の分析を行った結果,BMPR2 に同じ突然変異,すなわち,エクソン 3 の 354 番目の位置のチミンがグアニンに変換した突然変異を有していた.

結 論

見かけ上は散発性の原発性肺高血圧症と思われる症例の多くは,家族性であるのかもしれない.最近 BMPR2 の突然変異が発見されたことによって,この疾患に対して感受性がある人々の同定が可能になるはずである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 345 : 319 - 24. )