遺伝性出血性毛細管拡張症の患者における肺高血圧症の臨床学的および分子遺伝学的特徴
Clinical and Molecular Genetic Features of Pulmonary Hypertension in Patients with Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia
R.C. TREMBATH AND OTHERS
家族性原発性肺高血圧症のほとんどの患者が,受容体のトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)スーパーファミリーの一員である骨形成因子受容体 II(BMPR2)遺伝子に欠陥を有している.遺伝性出血性毛細管拡張症の患者は,原発性肺高血圧症と区別できないような肺疾患を有していることがあるため,これらの患者について,肺疾患の遺伝的基盤を検討した.
五つの家系に属する人々に加えて,遺伝性出血性毛細管拡張症の個別の患者 1 例を対象として評価を行い,10 例の肺高血圧症を同定した.もっとも大きな二つの家系に対しては,エンドグリンおよびアクチビン受容体様キナーゼ 1(ALK1)などの TGF-β–受容体蛋白質をコードしている遺伝子と,BMPR2 との連鎖を調べるために,マイクロサテライトマーカーを利用した.遺伝性出血性毛細管拡張症と肺高血圧症の被験者にも,突然変異を探索するために ALK1 と BMPR2 のスキャンを行った.
ALK1 を含んだ領域である染色体 12q13 上に,肺高血圧症と遺伝性出血性毛細管拡張症の連鎖を示唆する領域を同定することができた.また,原発性肺高血圧症の特徴と区別不能な臨床学的および組織学的な特徴が認められる病態の被験者において遺伝されているアクチビン受容体様キナーゼ 1 のアミノ酸の変化も同定することができた.4 例の被験者と 1 例の対照者で実施した免疫組織化学分析からは,正常および患部の肺動脈において,アクチビン受容体様キナーゼ 1 の肺血管内皮での発現が示された.
遺伝性出血性毛細管拡張症に関連した肺高血圧症は,ALK1 の突然変異がかかわっている可能性がある.そして,これらの突然変異は,遺伝性出血性毛細管拡張症の特徴である血管拡張や,原発性肺高血圧症に特徴的な小肺動脈の閉塞などをはじめとする多様な作用と関連している.