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July 12, 2001 Vol. 345 No. 2

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ライム病の持続性症状と病歴を有する患者を対象とした抗菌薬治療に関する二つの比較対照試験
Two Controlled Trials of Antibiotic Treatment in Patients with Persistent Symptoms and a History of Lyme Disease

M.S. KLEMPNER AND OTHERS

背景

急性ライム病に対して推奨されている抗菌薬治療が実施されたあとも,その症状が持続している患者には,抗菌薬治療を延長することが有効なのかどうかということについては,意見が分かれている.

方 法

われわれは二つの無作為試験を実施した:一つは,試験組み入れ時に Borrelia burgdorferi に対する IgG 抗体が血清陽性であった 78 例の患者を対象とした試験で,もう一つの試験は,この抗体が血清陰性であった 51 例の患者を対象とした試験であった.これらの患者には,セフトリアキソンを 1 日 2 g,30 日間静脈内投与したあとにドキシサイクリンを 1 日 200 mg,60 日間経口投与する治療か,あるいはこれにマッチしたプラセボの静脈内投与と経口投与のいずれかを行った.どの患者にも,詳しく記録されたライム病の治療歴が あったが,骨格筋痛,神経認知症状,あるいは感覚異常が持続したままで,しばしば倦怠感を伴うこともあった.主要転帰の評価尺度は,医学的転帰検査・36 項目の簡略一般健康状態調査(the Medical Outcomes Study 36-Item Short-Form General Health Survey:SF-36)の身体的および精神的健康に関する構成要素の要約尺度 ― 健康に関連した QOL を測定する尺度の一つ ― による試験 180 日目の時点における改善とした.

結 果

計画されていた中間解析の実施後に,データおよび安全性監視委員会によって,これらの試験の中止が勧告された.それは,107 例目までの患者のデータから,計画されていた 260 例のすべての患者を組み入れたときにも,治療の有効性について 2 群間に認められた有意な差が観察される可能性はあまりにも少ないということが示されたためであった.患者の健康に関連した QOL は,試験開始時の評価において,高度に障害されていることが確認された.intention-to-treat 解析では,血清陽性患者と血清陰性患者のいずれにおいても,抗菌薬治療を延長したことによって得られた転帰には,プラセボと比較して有意な差は認められなかった.

結 論

急性ライム病に対して抗菌薬の前治療を受けたにもかかわらず,その症状が持続している患者では,健康に関連した QOL がかなり障害されている.しかしながら今回実施した二つの試験では,これらの症状が,90 日間に及ぶ抗菌薬の静脈内投与および経口投与の治療によって,プラセボよりも改善するということはなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 345 : 85 - 92. )