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July 12, 2001 Vol. 345 No. 2

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同種腎移植片の慢性拒絶反応におけるレシピエントの間葉細胞による新生内膜および尿細管間質への浸潤
Neointimal and Tubulointerstitial Infiltration by Recipient Mesenchymal Cells in Chronic Renal-Allograft Rejection

P.C. GRIMM AND OTHERS

背景

組織の再構築は,間葉細胞(線維芽細胞および筋線維芽細胞)に依存しており,腎臓移植の慢性拒絶反応の顕著な特徴の一つである.ところが,この再構築にかかわっている間葉細胞は,局所的に発生するものなのか,それとも循環している前駆細胞から発生するものなのかはわかっていない.

方 法

女性ドナーから同種移植片の提供を受けた男性レシピエント 6 例,男性ドナーから同種移植片の提供を受けた女性レシピエント 4 例,男性ドナーから同種移植片の提供を受けた男性レシピエント 2 例,および女性ドナーから同種移植片の提供を受けた女性レシピエント 2 例から,同種腎移植片の生検検体を入手した.これらの同種移植片は,すべてが慢性拒絶反応を示し始めていた.平滑筋の α-アクチンを含有した間葉細胞の同定には免疫組織化学の手法を用い,Y 染色体の DNA を保有した間葉細胞の同定には in situ ハイブリッド形成法を利用した.

結 果

Y 染色体は,ドナーとレシピエントの両者がともに女性の同種腎移植片から採取した二つの検体では同定できなかった.ドナーとレシピエントの両者がともに男性の同種腎移植片から採取した二つの検体では,間葉細胞の約 40%に Y 染色体が存在していた.ドナーが女性でレシピエントが男性の同種腎移植片の 6 検体については,平均(± SD)で,新生内膜の間葉細胞の 34 ± 16%,外膜の間葉細胞の 38 ± 12%,および間隙の間葉細胞の 30 ± 7%に,Y 染色体のマーカーが存在していた.この結果は,間葉細胞は,ドナーよりもむしろレシピエントから発生したものであることを示していた.また,ドナーが男性でレシピエントが女性の同種腎移植片から採取した四つの検体では,それぞれの間葉細胞の 24 ± 15%,33 ± 9%,および 23 ± 8%に Y 染色体のマーカーが存在していたが,これはドナーの間葉細胞が相当数,存続していることを示すものであった.

結 論

慢性拒絶反応を示し始めている同種腎移植片の血管および間隙に宿主由来の間葉細胞が存在しているということは,循環している間葉前駆細胞に炎症部位への遊走能があることを示す証拠になるものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 345 : 93 - 7. )