腫瘍壊死因子αの阻害による強直性脊椎炎の治療
Treatment of Ankylosing Spondylitis by Inhibition of Tumor Necrosis Factor α
J.D. GORMAN, K.E. SACK, AND J.C. DAVIS, JR.
重大な病態を引き起こす強直性脊椎炎には,有効な治療法がほとんどない.脊椎関節炎では腫瘍壊死因子 α が中心的役割を果しているため,われわれは,強直性脊椎炎患者を対象とし,組換えヒト腫瘍壊死因子受容体 (p75):Fc 融合蛋白質であるエタネルセプト(etanercept)の無作為二重盲検プラセボ対照試験を行った.
活動性の炎症性強直性脊椎炎の患者 40 例を,エタネルセプト(25 mg)またはプラセボを週 2 回 4 ヵ月間皮下注射する治療に無作為に割付けた.主要エンドポイントは,朝のこわばり,脊椎痛,機能,疾患活動性に関する患者による包括的評価,関節腫脹といった指標の改善の組合せとした.患者は試験中,非ステロイド抗炎症薬,経口コルチコステロイド薬(1 日当り≦10 mg),および疾患修飾性抗リウマチ薬を,一定の用量で使用してもよいものとした.
エタネルセプトを用いた治療は,有意な持続する改善をもたらした.4 ヵ月後,エタネルセプト群の患者の 80%に治療が有効であり,これに対してプラセボ群では 30%であった(P=0.004).朝のこわばり,脊椎痛,機能,QOL,付着部炎,胸郭拡大,赤血球沈降速度,C 反応性蛋白質などの種々の疾患活動性の指標に関する,投与前値からの改善は,エタネルセプト群のほうが有意に大きかった.経時的解析は,治療の奏効が迅速であり,時間が経過しても効果が減少しなかったことを示した.エタネルセプトは忍容性が高く,2 群の有害事象発生率に有意差は認められなかった.
4 ヵ月間のエタネルセプトを用いた治療は,強直性脊椎炎患者に,迅速で有意な持続性の改善をもたらした.