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May 2, 2002 Vol. 346 No. 18

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β遮断薬で治療した拡張型心筋症における心筋遺伝子の発現
Myocardial Gene Expression in Dilated Cardiomyopathy Treated with Beta-Blocking Agents

B.D. LOWES AND OTHERS

背景

β遮断薬療法は,特発性拡張型心筋症患者の心機能を改善する可能性がある.β遮断薬療法は,収縮性と病的肥大を調節する心筋遺伝子の発現を変化させることで,拡張型心筋症に良好な機能効果を与えるという仮説を,われわれは検証した.

方 法

特発性拡張型心筋症患者 53 例を βアドレナリン(作動性)受容体遮断薬(メトプロロールかカルベジロール)またはプラセボのいずれかに無作為に割付けた.右心室中隔心内膜心筋の生検検体から総 RNA を抽出し,収縮性調節遺伝子(β1,β2 アドレナリン受容体,筋小胞体中のカルシウム ATPase および α,βミオシン重鎖アイソフォームをコード)のメッセンジャー RNA(mRNA)量と,病的肥大に関係する遺伝子(βミオシン重鎖と心房性ナトリウム利尿ペプチドをコード)の mRNA 量を定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応で測定した.また βアドレナリン受容体の心筋濃度も測定した.ベースラインと治療 6 ヵ月後の値を測定し,遺伝子発現の変化を RI 心室造影法で測定した左室駆出率の変化と比較した.

結 果

α遮断薬療法を受けた患者 32 例(mRNA 測定を完了した患者)中 26 例で,左室駆出率に最低 5 EF 単位の改善がみられた(平均 [±SE] 増加,18.8±1.8).β遮断薬療法に反応を示さなかった 6 例(平均変化,2.5±1.8 EF 単位の減少)と比較すると,反応を示した患者では,筋小胞体カルシウム ATPase mRNA と αミオシン重鎖 mRNA が増加し,βミオシン重鎖 mRNA が減少した.筋小胞体カルシウム ATPase の変化は,自発的反応を示したプラセボ群患者では認められなかった.βアドレナリン受容体の mRNA や蛋白発現の変化については,反応した患者としなかった患者でいずれも差はみられなかった.

結 論

特発性拡張型心筋症では,β遮断薬による治療に伴う機能改善は心筋遺伝子発現の変化と関連している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 346 : 1357 - 65. )