小型の腹部大動脈瘤に対する早期修復と監視の比較
Immediate Repair Compared with Surveillance of Small Abdominal Aortic Aneurysms
F.A. LEDERLE AND OTHERS
小型の腹部大動脈瘤に対する待機的外科修復が生存率を改善するかどうかについては議論の余地がある.
直径 4.0~5.4 cm の腹部大動脈瘤があり,外科手術リスクが高くない 50~79 歳の患者を,動脈瘤の早期開腹外科的修復と,動脈瘤が症候性になるか 5.5 cm に大きくなるまで修復を保留した状態での 6 ヵ月ごとの超音波検査または CT による監視に,無作為に割付けた.追跡調査期間は 3.5~8.0 年であった(平均 4.9 年).
患者計 569 例を早期修復に,567 例を監視に,無作為に割付けた.試験終了までに,早期修復群患者の 92.6%,および監視群患者の 61.6%に動脈瘤修復が実施された.主要転帰である全死因死亡率は,2 群で有意差は認められなかった(監視群と比較した早期修復群の相対リスク 1.21;95%信頼区間 0.95~1.54).生存率には,登録時の年齢や動脈瘤の直径により事前に定義したいずれのサブグループにおいても,早期修復のほうが良好であるという傾向は認められなかった.早期修復群の総手術死亡率が 2.7%という低値であったにもかかわらず,これらの知見が得られた.腹部大動脈瘤に関連した死亡率も,早期修復群(3.0%)のほうが,監視群(2.6%)と比較して,低いということはなかった.監視群の 11 例で腹部大動脈瘤の破裂があり(年 0.6%),7 例が死亡した.腹部大動脈瘤に関連した入院率は,監視群のほうが 39%低かった.
手術死亡率が低い場合でも,5.5 cm 未満の腹部大動脈瘤の待機修復により生存率が改善されることはない.