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日本語アブストラクト

January 3, 2002 Vol. 346 No. 1

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移植心臓のキメリズム
Chimerism of the Transplanted Heart

F. QUAINI AND OTHERS

背景

男性患者が女性ドナーから心臓移植を受ける症例は,原始細胞がレシピエントから移植片に移行するかどうか,ならびにレシピエントの表現形質をもつ細胞が最終的にドナー由来の心臓に生着するかどうかを明らかにできるまれな機会である.Y 染色体を利用すれば,移行し幹細胞抗原を発現している未分化細胞を検出し,レシピエントに由来する原始細胞とドナー由来の原始細胞を区別することができる.

方 法

レシピエントの心房標本と移植片の心房および心室の標本に対し螢光 in situ ハイブリダイゼーションを行い,男性レシピエントに移植された女性ドナー由来の心臓 8 例に Y 染色体が存在するかどうかを調べた.Y 染色体を有し,c-kit,MDR1,Sca-1 を発現している原始細胞の有無も検討した.

結 果

Y 染色体を有する細胞は,ドナー心臓の筋細胞,冠細動脈,毛細血管のそれぞれ7~10%を占めており,これらの細胞の増殖性は高かった.対照心臓の心室と比較して,移植心臓の心室は,c-kit,MDR1,Sca-1 が陽性の細胞の数が顕著に多かった.原始細胞の数は,ドナー心臓の心室に比べて,レシピエントの心房およびドナー心臓の心房に多く,これらの細胞の 12~16%に Y 染色体が認められた.未分化細胞には骨髄由来のマーカーがみられなかった.MEF2,GATA-4,ネスチン(これらにより筋細胞であることが確認される)を発現している前駆細胞および Flk1(これにより内皮細胞であることが確認される)を発現している前駆細胞が同定された.

結 論

われわれの結果は,原始細胞がレシピエントから移植心臓に移行することにより,高レベルの心臓キメリズムが生じることを示している.幹細胞および前駆細胞と推定される細胞が対照心臓の心筋層に存在することが確認され,移植心臓ではその数が増加していた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 346 : 5 - 15. )