March 28, 2002 Vol. 346 No. 13
癌手術後のエノキサパリンを用いる静脈血栓塞栓症予防の継続期間
Duration of Prophylaxis against Venous Thromboembolism with Enoxaparin after Surgery for Cancer
D. BERGQVIST AND OTHERS
腹部癌手術には静脈血栓塞栓症の高いリスクが伴うが,術後血栓予防の最適継続期間は不明である.
二重盲検多施設共同試験を実施し,計画的で根治的な腹部または骨盤癌の開腹手術を受けた患者にエノキサパリン(40 mg 皮下投与)を 6~10 日間連日投与したあと,さらに 21 日間エノキサパリンまたはプラセボの投与に無作為に割り付けた.25 日目と 31 日目のあいだ,または静脈血栓塞栓症の症状が認められた場合はそれより早く,両側の静脈造影を実施した.有効性に関する主要エンドポイントは,25~31 日目の静脈血栓塞栓症の発症率とした.主要安全性エンドポイントは無作為化後 3 週間の出血とした.患者は 3 ヵ月間追跡調査された.
有効性の intention-to-treat 解析は,患者 332 例が対象であった.二重盲検期間終了時の静脈血栓塞栓症発症率は,プラセボ群で 12.0%,エノキサパリン群で 4.8%であった(P=0.02).この差は 3 ヵ月後も持続していた(13.8% 対 5.5%,P=0.01).エノキサパリン群の 3 例およびプラセボ群の 6 例が術後 3 ヵ月以内に死亡した.二重盲検期間あるいは追跡調査期間の出血およびその他の合併症発生率には,有意差が認められなかった.
腹部または骨盤癌手術後のエノキサパリンによる 4 週間の血栓予防法は,エノキサパリンによる 1 週間の血栓予防法に比べて,安全であり,かつ静脈造影で示される血栓症の発症率を有意に減少させる.