October 10, 2002 Vol. 347 No. 15
β1 およびα2C アドレナリン受容体の相乗性多型とうっ血性心不全のリスク
Synergistic Polymorphisms of β1- and α2C-Adrenergic Receptors and the Risk of Congestive Heart Failure
K.M. SMALL, L.E. WAGONER, A.M. LEVIN, S.L.R. KARDIA, AND S.B. LIGGETT
アドレナリンによる持続的な心臓への刺激は,心不全の発現と進行に関係している.ノルエピネフリンの放出は,シナプス前部の α2 アドレナリン受容体からの負のフィードバックにより調節されており,筋細胞上に放出されたノルエピネフリンの標的は,β1 アドレナリン受容体である.遺伝子導入細胞では,多型 α2Cアドレナリン受容体(α2CDel322-325)は,機能が低下しており,また β1 アドレナリン受容体の変異体( β1Arg389)は,機能が増進している.われわれは,シナプスでのノルエピネフリン放出の増加と筋細胞における受容体機能の増強をもたらす,この受容体の変異の組み合せが,心不全にかかりやすくするのであろうという仮説を立てた.
これら遺伝子座での遺伝子タイピングを,心不全を有する患者 159 例と対照者 189 例で行った.ロジスティック回帰法を用いて,各遺伝子型とそれらの相互作用の心不全のリスクに対する影響の可能性を検討した.
黒人対象者では,α2CDel322-325 に関してホモ接合の人での心不全に対する補正オッズ比は,他の α2Cアドレナリン受容体遺伝子型の人と比べた場合,5.65 であった(95%信頼区間 2.67~11.95;P<0.001).β1Arg389 単独では,心不全に対するリスクは増加しなかった.しかし,両変異がホモ接合性の人では,心不全のリスクは顕著に増加した(補正オッズ比 10.11;95%信頼区間 2.11~48.53;P=0.004).9 個のショートタンデムリピート対立遺伝子の頻度においては,心不全患者と対照者に差はみられなかった.白人対象者では,心不全のリスクを十分に評価するには,両多型がホモ接合である者が少なすぎた.
α2CDel322-325 受容体と β1Arg389 受容体は,相乗的に働き,黒人における心不全のリスクを増加させる.これら 2 つの遺伝子座における遺伝子タイピングは,心不全やその進行のリスクがある人で,早期予防法の対象者になりそうな人の同定に有用な方法である可能性がある.