December 26, 2002 Vol. 347 No. 26
癌の第 I 相臨床試験のための同意文書における利益とリスクの記載
Descriptions of Benefits and Risks in Consent Forms for Phase 1 Oncology Trials
S. HORNG AND OTHERS
同意文書は,癌の第 I 相臨床試験の参加者に治験薬からの利益を期待させ,重大なリスクを見過ごさせるよう仕向けていると,倫理学者が提議している.
直接的な利益とリスクに対する,文書の記述を評価するため,1999 年の第 I 相臨床試験のためのすべての同意文書を,国立癌研究所指定の癌センターの 80%と,抗癌剤を開発する大手製薬会社8社のうちの6社から収集した.各事例において,臨床試験の特性,研究の目的と手順の記述,利益の見込み,リスクについての記述,および選択肢の記述について評価した.
同意文書 272 例のうち,268 例では,臨床試験は研究であると明確に述べられており,249 例では,臨床試験の目的は,安全性を試験することであると記されていた.ほぼすべての同意文書(269 例)には,臨床試験からの脱退の権利が記されていた.ほとんどの同意文書(260 例)では,治験薬のことを「治療(treatment)」または「療法(therapy)」と記載していた.1 例だけが,被験者への直接的な利益を約束していた.多くの同意文書(181 例)が,リスクとして死亡をあげており,治癒を可能性ある利益として述べている文書はわずか(14 例)しかなかった.ほとんど(229 例)が,未知のリスクも含まれると述べており,重度または永続的な障害となる可能性があることを示唆していた(224 例).
癌の第 I 相臨床試験のための同意文書は,被験者への直接的な利益を約束することはほとんどなく,治癒について記述することもめったになく,たいていはリスクの重篤性や予測が不可能であることを伝えている.改善の余地はあるが,これら同意文書の内容が,癌の第 I 相臨床試験の被験者による誤解の主な原因になる可能性は低い.