心拍のないドナーからの腎移植
Kidney Transplantation from Donors without a Heartbeat
M. WEBER, D. DINDO, N. DEMARTINES, P.M. AMBUHL, AND P.-A. CLAVIEN
腎ドナーの劇的な不足は,たとえば心拍のないドナーのような,他の臓器源への関心を引き起した.こうしたドナーからの死体腎の短期生着率は,心拍のあるドナーからの死体腎の短期生着率と同程度であることを蓄積データは示唆している.しかし,マッチングを行った大規模で長期追跡を伴う研究のデータは存在しない.われわれは単一施設で,心拍のないドナーおよび心拍のあるドナーから得た腎移植片をマッチさせた研究を,15 年の追跡期間を設けて実施した.
1985~2000 年のあいだに,スイスのチューリッヒ大学で心拍のないドナーからの腎移植 122 件を行った.これらの手術の転帰を,心拍のあるドナーからの腎移植 122 件の転帰と比較した.レシピエントは,年齢,性別,移植回数,移植時期でマッチさせた.
レシピエントの特性は両群間で有意差はなかった.移植腎機能の遅延の頻度は,心拍のないドナーから腎臓を得た患者(48.4%)のほうが心拍のあるドナーから腎臓を得た患者(23.8%)よりも有意に高いことが判明した(P<0.001).しかし,移植腎の長期生着率は 2 群で同程度(P=0.98)であった;10 年後の移植腎生着率は心拍のないドナーからの腎臓では 78.7%,心拍のあるドナーからの腎臓では 76.7%であった.
移植腎機能遅延の頻度は,心拍のないドナーから提供された腎臓のほうが心拍のあるドナーからの腎臓よりも有意に高いが,長期転帰についてはこの 2 種の移植腎のあいだに差はみられない.