CFTR 突然変異が存在しない変異型嚢胞性線維症表現型
Variant Cystic Fibrosis Phenotypes in the Absence of CFTR Mutations
J.D. GROMAN, M.E. MEYER, R.W. WILMOTT, P.L. ZEITLIN, AND G.R. CUTTING
嚢胞性線維症は,きわめて多様な臨床像をもつ常染色体性劣性疾患で,寿命を制限する.古典型は,気道,消化管,男性生殖管および汗腺の特徴的所見を伴い,嚢胞性線維症膜通過伝導制御(CFTR)遺伝子の機能喪失突然変異により引き起される.一方,嚢胞性線維症の非古典型は,CFTR 蛋白の機能を喪失せずに減弱させる突然変異と関係している.そこでわれわれは,CFTR 機能の変化が,変異型嚢胞性線維症表現型全体の原因であるかどうかを検討した.
34 ヵ所の医療施設から紹介された非古典型嚢胞性線維症患者 74 例を対象に CFTR 遺伝子の広範な遺伝子解析を行った.CFTR 座と関連があるかどうかを確定し,汗腺と鼻上皮における CFTR 機能の程度を測定する目的で,同定された遺伝子突然変異をもたない発端者と非古典型嚢胞性線維症を有する兄弟・姉妹を含む 2 家族について評価した.
研究を行った 74 例の患者のうち 29 例では 2 ヵ所に,15 例では 1 ヵ所に CFTR 遺伝子の突然変異が存在し,30 例では突然変異は存在しなかった.一般的な嚢胞性線維症の原因となる突然変異に対するスクリーニングで突然変異が 1 ヵ所同定されたあとに紹介された患者では,スクリーニングによりそのような突然変異が同定されなかった患者に比べて,最終的に 2 ヵ所の遺伝子型に突然変異を有する頻度がより高かった(患者 34 例中 26 例 対 患者 40 例中 3 例,P<0.001).臨床特性と汗の塩化物濃度の比較では,突然変異が 2 ヵ所の患者,1 ヵ所の患者,突然変異が存在しない患者のあいだに有意差はみられなかった.2 家族におけるハプロタイプ解析では,CFTR との関連はなかった.疾患を有するそれぞれの兄弟・姉妹では汗の塩素濃度が上昇したが,汗腺と鼻上皮におけるサイクリック AMP 媒介のイオンおよび体液の輸送の測定から機能性 CFTR の存在が示された.
CFTR 遺伝子の突然変異以外の因子が,CFTR 機能不全に起因する非古典型嚢胞性線維症と臨床的に見分けのつかない表現型を形成する場合がある.