March 20, 2003 Vol. 348 No. 12
非定型肺炎連鎖球菌による結膜炎の集団発生
An Outbreak of Conjunctivitis Due to Atypical Streptococcus pneumoniae
M. Martin and Others
2002 年 2 月,ダートマス大学保健施設の医師が,結膜炎の集団発生を確認した;結膜スワブの培養により,肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の関与が明らかになった.集団発生の規模の決定,原因確認,伝播様式の同定,感染対策実施のための調査が開始された.
保健施設のデータベースから結膜炎の診断を調査した.罹患した学生からウイルスおよび細菌の培養を行った.ethylhydrocupreine(オプトヒン)に感受性を示したために肺炎球菌であると推定された胆汁溶解性単離菌について,血清型分類,莢膜染色,パルスフィールドゲル電気泳動,単一 DNA プローブおよび多座位配列タイピングを行った.インターネットを利用して,危険因子のコホート研究を実施した.感染対策は,アルコールを主成分としたハンドジェルと,予防に関するお知らせの配布であった.
2002 年 1 月 1 日~4 月 12 日までに,学生 5,060 人のうち 698 人(13.8%)が結膜炎の診断を受け,これには 1 年生の 22%が含まれていた.肺炎球菌であると推定された菌は,結膜スワブの 43.3%(254 個中 110 個)から単離された;試料 85 個で行ったウイルス培養は陰性であった.DNA プローブおよび多座位配列タイピングにより,この菌が肺炎球菌であることが確認されたが,この細菌には特徴的な莢膜がなかった.パルスフィールドゲル電気泳動では,この菌株が,1980 年に米国の別の場所で結膜炎を集団発生させた肺炎球菌と同一であることが明らかになった.学生 1,832 人の調査データの分析により,結膜炎の学生との接触,コンタクトレンズの装着,あるスポーツチームの一員であること,男子学生・女子学生クラブハウスで行われたパーティーへの参加またはそこでの生活が,結膜炎に関連していることが示された.結膜炎の診断率は,感染対策の実施後および春休み後に低下した.
今回の大学構内における結膜炎の大規模集団発生は,20 年前に集団発生を起した菌株と同一の S. pneumoniae の非定型無莢膜株により引き起された.