高齢者におけるインフルエンザワクチン接種と心疾患および脳卒中による入院率の減少
Influenza Vaccination and Reduction in Hospitalizations for Cardiac Disease and Stroke among the Elderly
K.L. Nichol and Others
上気道疾患は,虚血性心疾患や脳卒中のリスクの増大と関連している.2 回のインフルエンザ流行時期に,心疾患や脳卒中による入院のリスク,肺炎やインフルエンザによる入院のリスク,全死因死亡のリスクに対するインフルエンザワクチン接種の影響を評価した.
3 つの大規模なマネージド・ケア機関に加入する地域住民(65 歳以上)のコホート集団を,1998~99 年と 1999~2000 年のインフルエンザ流行時期に調査した.管理データと臨床データを用いて転帰を評価し,多変量ロジスティック回帰を用いてベースライン時の被験者の人口統計学的特性と健康特性を補正した.
1998~99 年コホートの被験者 140,055 例と 1999~2000 年コホートの被験者 146,328 例のうち,それぞれ 55.5%と 59.7%がワクチン接種を受けた.ベースライン時には,ワクチン接種を受けた被験者は,ワクチン接種を受けていない被験者に比べて平均的に健康状態が悪く,大半の合併症の有病率,外来ケア率,ベースライン以前の肺炎による入院率がより高かった.しかし,ワクチン接種を受けていない被験者は,ベースライン以前に痴呆や脳卒中の診断を受けた割合が高かった.インフルエンザワクチンの接種は,次の疾患による入院のリスクの減少と関連していた;心疾患(両流行時期中に 19%の減少 [P<0.001]),脳血管疾患(1998~99 年の流行時期では 16%の減少 [P<0.018],1999~2000 年の流行時期では 23%の減少 [P<0.001]),肺炎やインフルエンザ(1998~99 年の流行時期では 32%減少 [P<0.001],1999~2000 年の流行時期では 29%の減少 [P<0.001]).また,全死因死亡のリスクの減少と関連していた(1998~99 年では 48%の減少 [P<0.001],1999~2000 年では 50%の減少 [P<0.001]).年齢,ベースライン時の疾患の有無,調査場所ごとの分析では,こうした結果はすべてのサブグループで一貫していた.
高齢者では,インフルエンザワクチンの接種は,全死因死亡のリスクのみならず,インフルエンザ流行時期の心疾患,脳血管疾患,肺炎あるいはインフルエンザによる入院のリスクの減少と関連している.これらの知見は,ワクチン接種の利益を強調し,高齢者のワクチン接種率を増加させる取り組みを支持している.