カリフォルニア州ノースリッジ地震後の病院避難の意義
Implications of Hospital Evacuation after the Northridge, California, Earthquake
C.H. Schultz, K.L. Koenig, and R.J. Lewis
1994 年 1 月 17 日,カリフォルニア州ノースリッジでモーメント・マグニチュード(総エネルギー放出量)6.7 の地震が発生し,複数の病院から患者が避難した.われわれは,避難の理由と方法および用いられた緊急時の管理手段を調査した.カリフォルニアでの経験は,テロ行為を含むあらゆる大災害に対処するための,病院の戦略にとって意義があると考えられる.
1995 年 9 月~1996 年 9 月に,ノースリッジ地震後に患者を避難させたと報告したロサンゼルス郡のすべての急性期病院を調査した.避難中に病院で勤務中であった医師,看護師,病院管理者,および職員が,58 項目の質問票に選択肢から回答した.
急性期病院 91 ヵ所のうち 8 ヵ所(9%)で避難が行われた.6 ヵ所は 24 時間以内に患者を避難させ(即時避難群),そのうち 4 ヵ所は完全な避難,2 ヵ所は部分的な避難であった.避難の主な理由として,6 ヵ所すべてが水道関係の被害および停電などの非構造的被害をあげた.5 ヵ所は非常に重篤な患者を最初に避難させ,1 ヵ所はきわめて健康状態のよい患者を最初に避難させた.全病院が,患者を輸送するために,専用の装置よりむしろ利用可能な道具(毛布,戸板および台車付き担架)を利用した.避難が原因の死亡例はなかった.最初の調査では損害がないとされていたにもかかわらず,構造的被害のために,ある病院は 3 日後に患者を避難させ,別の病院は 14 日後に避難させた(遅延避難群).これら 2 つの病院は建物の取り壊しが必要であった.一部の病院は独自に避難患者の輸送先を確認したが,他の病院はロサンゼルス郡救急オペレーションセンターに支援を求めた.これら 2 つの方法は同様に効果的であった.
たとえ中程度の地震であっても,病院は,直後の非構造的被害により患者を避難させざるをえなくなるリスクや,あとから構造的被害が発見され永久閉鎖となるリスクの両方にさらされる.複数の病院から多数の入院患者が避難する場合も,利用可能な資源や人員を用いることで,迅速に安全に遂行できる.