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May 1, 2003 Vol. 348 No. 18

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左室機能不全と大動脈弁狭窄を有する重症患者に対するニトロプルシド
Nitroprusside in Critically Ill Patients with Left Ventricular Dysfunction and Aortic Stenosis

U.N. Khot and Others

背景

血管拡張薬は,生命を脅かすような低血圧を起す可能性が懸念されるため,重度の大動脈弁狭窄症患者には禁忌だと考えられている.しかし,末梢血管収縮が後負荷に関与しているならば,ニトロプルシドなどの血管拡張薬が心筋機能を改善する可能性がある.

方 法

重度の大動脈弁狭窄と左室機能不全を有する患者 25 例で,ニトロプルシドの静脈内投与に対する反応を測定した.心不全の侵襲的血行動態モニタリングのために集中治療室に入院している患者で,駆出率が低下し(≦0.35),重度の大動脈弁狭窄で(大動脈弁口面積≦1 cm2 ),心係数が低下している(≦2.2 L/min/m2 )患者を試験に組み入れた.強心薬や昇圧薬の静脈内投与の必要があるか,平均全身動脈圧が低いこと(<60 mmHg)で定義した低血圧の患者は除外した.他の弁疾患または冠動脈疾患の併存は考慮せずに患者を組み入れた.

結 果

ベースライン時の平均(±SD)駆出率は 0.21±0.08 であった;大動脈弁領域は 0.6±0.2 cm2 であり,最大圧較差は 65±37 mmHg,平均圧較差は 39±23 mmHg であった;心係数は 1.60±0.35 L/min/m2 であった.ニトロプルシド投与 6 時間後(用量を平均 103±67 μg/min に増量した時点)には,心係数が 2.22±0.44 L/min/m2 に増加した(ベースラインと比較した P<0.001).ニトロプルシド投与 24 時間後(用量 128±96 μg/min)には,心係数がさらに増加して 2.52±0.55 L/min/m2 となった(ベースラインと比較した P<0.001).ニトロプルシドは忍容性が高く,副作用はわずかであった.

結 論

ニトロプルシドは,重度の左室収縮機能障害と重度の大動脈弁狭窄に起因する代償不全の心不全患者における心臓機能を,迅速かつ顕著に改善した.ニトロプルシドはこれらの重症患者における大動脈弁置換または経口血管拡張薬療法への,安全で有効な橋渡しとなる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 1756 - 63. )