重度の肥満における低炭水化物食と低脂肪食との比較
A Low-Carbohydrate as Compared with a Low-Fat Diet in Severe Obesity
F.F. Samaha and Others
炭水化物制限食が,体重減少とアテローム性動脈硬化症の危険因子に及ぼす影響は,十分に評価されていない.
平均体格指数が 43 で,糖尿病(39%)または代謝症候群(43%)の有病率が高い重度肥満の被験者 132 例(うち黒人 77 例,女性 23 例)を,炭水化物制限食(低炭水化物食)またはカロリー・脂肪制限食(低脂肪食)のいずれかに無作為に割付けた.
79 例の被験者が 6 ヵ月の研究期間を完了した.全被験者を組み入れた解析(脱落した被験者については最後の観察結果を用いた)によれば,血糖降下薬や脂質低下薬の使用の有無に関係なく,低炭水化物食群の被験者は低脂肪食群の被験者に比べて体重がより減少し(平均 [±SD] -5.8±8.6 kg 対 -1.9±4.2 kg;P=0.002),トリグリセリド値の低下もより大きかった(平均 -20±43% 対 -4±31%;P=0.001).インスリン感受性についても,糖尿病でない被験者のみで測定したところ,低炭水化物食群の被験者でより改善した(6±9% 対 -3±8%,P=0.01).体重減少量(P<0.001)と低炭水化物食(P=0.01)への割付けが,トリグリセリド値とインスリン感受性の改善に対する独立した予測因子であった.
糖尿病または代謝症候群の有病率が高い重度肥満の被験者では,炭水化物制限食のほうが,カロリー・脂肪制限食よりも 6 ヵ月間で体重がより減少した.また,体重減少量で補正したあとでさえも,インスリン感受性とトリグリセリド値に相対的な改善がみられた.これらの著しい肥満の被験者における体重減少の全体的な差と群間の差が小さいことや,研究期間が短いことから,この知見は慎重に解釈しなければならない.炭水化物制限食を推奨する前に,心血管系の長期転帰を評価する今後の研究が必要である.