北米および南米における薬剤耐性 HIV 感染に対するHIV-1 融合阻害剤エンフュービルタイド
Enfuvirtide, an HIV-1 Fusion Inhibitor, for Drug-Resistant HIV Infection in North and South America
J.P. Lalezari and Others
T-20 と最適化療法の比較試験 1(T-20 vs. Optimized Regimen Only Study 1; TORO 1)は,ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)の融合阻害剤であるエンフュービルタイド(enfuvirtide,T-20)の無作為非盲検第 III 相試験であった.
米国,カナダ,メキシコ,ブラジルの 48 施設の患者で,以前に 3 つの抗レトロウイルス薬分類に属する薬剤で 6 ヵ月以上治療を受けたか,これらの薬剤分類の薬剤に耐性を示すか,またはその両方であり,血漿 1 mL 当りの HIV-1 RNA が 5,000 コピー以上である患者を対象とした.患者を 2:1 の割合で,エンフュービルタイド投与に加え,すでに行われている 3~5 種類の抗レトロウイルス薬を用いた最適化療法を行うか,最適化療法のみを行うか(対照群)に無作為に割付けた.有効性の主要エンドポイントは,ベースラインから 24 週間後までの血漿中 HIV-1 RNA 濃度の変化とした.
合計 501 例の患者を無作為化した.そのうち 491 例が試験薬の投与を 1 回以上受け,治療開始後に血漿中 HIV-1 RNA の測定を 1 回以上受けた.2 群は,ベースラインでの HIV-1 RNA 濃度の中央値(両群とも 5.2 log10 コピー/mL),CD4+細胞数の中央値(エンフュービルタイド群では 75.5 個/mm3,対照群では 87.0 個/mm3),患者背景,および先行する抗ウイルス療法に関して差がなかった.24 週間後,最小 2 乗法に基づくウイルス量のベースラインからの平均変化量(最終観察を繰り越した intention-to-treat 解析による)は,エンフュービルタイド群では 1.696 log10 コピー/mL の減少,対照群では 0.764 log10 コピー/mL の減少であった(P<0.001).CD4+細胞数の平均増加量は,それぞれ 76 個/mm3 および 32 個/mm3 であった(P<0.001).注射部位の反応が,エンフュービルタイド投与患者の 98%で報告された.エンフュービルタイド群では対照群より肺炎の症例が多かった.
以前に複数の抗レトロウイルス薬の投与を受け,多剤耐性 HIV-1 感染を起している患者では,最適化された抗レトロウイルス療法にエンフュービルタイドを加えると,24 週間のあいだ,抗レトロウイルス的および免疫学的に有意な利益が得られた.
(本論文は 2003 年 3 月 13 日 www.nejm.org に)発表された.