January 16, 2003 Vol. 348 No. 3
軟性気管支鏡に関連した緑膿菌感染の集団発生
An Outbreak of Pseudomonas aeruginosa Infections Associated with Flexible Bronchoscopes
A. Srinivasan and Others
気管支鏡などの内視鏡は,院内感染の集団発生にもっとも頻繁に関連する医療機器である.われわれは,気管支鏡検査実施後の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染の集団発生について調査した.
気管支肺胞洗浄検体から P. aeruginosa が検出される割合を検討するために,微生物学的検査の結果を再調査した.内視鏡と内視鏡室から得た環境サンプルを培養した.気管支鏡検査後 14 日の時点での感染を同定するために,医療記録を再調査した.
内視鏡検査室の気管支鏡を用いて得た気管支肺胞洗浄検体から P. aeruginosa が検出される割合は,ベースライン時の 10.4%から集団発生時では 31.0%に上昇した(相対リスク 2.97;95%信頼区間 2.28~3.90).環境,器具洗浄機および消化器内視鏡から得た標本の培養では P. aeruginosa が増殖しなかったが,3 つの気管支鏡から得た標本の培養では P. aeruginosa が増殖した.この 3 つの気管支鏡は,全米で回収の対象となっているものであった.集団発生時に,患者計 414 例に気管支鏡検査が実施され,これらの患者の 39 例(9.4%)で 48 件の気道および血液感染があった.32 件の感染(66.7%)では,P. aeruginosa が原因菌である可能性が確認された.汚染の可能性がある気管支鏡に接触したことが,患者 3 例の死亡に関与していた可能性がある.これらの機器の使用を中止したところ,P. aeruginosa が検出される割合は,元のレベルに戻った.
気管支鏡と関連した P. aeruginosa 感染のこの大規模な集団発生は,気管支鏡の生検ポートキャップがゆるいことが原因と考えられた.器具の安全性と気管支鏡検査に関する監視方法が改善されなければならない.さらに,欠陥のある医療機器についてよりよい回収手段が必要である.