双生児を対象とした症例対照研究における思春期と乳癌に対する遺伝的感受性
Puberty and Genetic Susceptibility to Breast Cancer in a Case–Control Study in Twins
A.S. Hamilton and T.M. Mack
乳癌は,卵巣ホルモンへの過剰な累積曝露に起因すると考えられている.遺伝性乳癌と散発性乳癌で予測因子が異なることは,発病機構が異なることを示唆している.乳癌に罹患した双生児が,そのような相違点の例証に有用である可能性がある.
片方または両方が乳癌に罹患した女性の双生児 1,811 組の情報を得た.乳癌に罹患したのが双生児の両方か片方のみか,一卵性か二卵性か,乳癌の家族歴の有無,疾患が両側性か片側性かに基づいて,双生児の組を層別化した.両方が乳癌に罹患した一卵性双生児は,他の双生児サブグループよりも遺伝的感受性が高いと仮定した.組にした双生児を,思春期の年齢およびその他の因子について比較した.双生児の片方のみが罹患した場合は乳癌の診断について,双生児の両方が罹患した場合は 2 人のうち診断の早いほうについて,補正オッズ比を算出した.
片方のみが乳癌に罹患した一卵性双生児では,思春期の開始が早かったほうの乳癌のリスクは高くなかった(補正オッズ比 0.8;95%信頼区間 0.6~1.2).両方が乳癌に罹患した一卵性双生児では,思春期が早かったほうが先に診断を受ける可能性が顕著に高かった(補正オッズ比 5.4;95%信頼区間 2.0~14.5).対照的に,双生児間で最初の妊娠が遅いこと,出産児数が少ないこと,閉経が遅いことは,双生児の片方が罹患した場合は乳癌のリスク増加と関連していたが,両方が罹患した場合は診断が早いことの予測因子とはならなかった.
双生児の中でもっとも遺伝的感受性が高いサブグループにおいて,早い思春期が乳癌の診断年齢に大きな影響を与えていることと,高齢期におけるホルモンに関連した重大な出来事との関連性が欠如していることは,遺伝性乳癌の大半の症例は累積のホルモン曝露と関連するのではなく,思春期のホルモンに対する異常な感受性に起因する可能性があることを示唆している.乳癌と早い初経との関連および成人期の生殖関連要因との関連は,異なった遺伝子型を反映している可能性がある.