February 13, 2003 Vol. 348 No. 7
血液中の血管内皮前駆細胞,血管機能および心血管リスク
Circulating Endothelial Progenitor Cells, Vascular Function, and Cardiovascular Risk
J.M. Hill and Others
心血管系の危険因子は,血管内皮細胞の損傷や機能障害を誘発して,アテローム発生の原因となる.そこでわれわれは,骨髄由来の血管内皮前駆細胞が持続的な血管内皮の修復に関与しており,これらの細胞の流動性が損なわれることや数が減少することが,血管内皮機能障害や心血管疾患が進行する原因であるという仮説を立てた.
男性 45 例(平均年齢[±SE] 50±2 歳)から末梢血を採取し,血管内皮前駆細胞のコロニー形成単位数を測定した.被験者の心血管リスクの程度はさまざまであったが,心血管疾患の既往はなかった.血管内皮依存性の機能および血管内皮非依存性の機能は,上腕動脈に対する高解像度超音波検査を用いて評価した.
血液中の血管内皮前駆細胞数と被験者の複合フラミンガム危険因子スコアのあいだに強い相関関係がみられた(r=-0.47,P=0.001).また,上腕動脈の血流依存性反応の測定でも,血管内皮機能と前駆細胞数とのあいだに有意な関連がみられた(r=0.59,P<0.001).実際に,従来の危険因子の有無よりも,血液中の血管内皮前駆細胞レベルのほうが,血管反応性のより優れた予測因子であった.さらに,心血管イベントのリスクが高い被験者から採取した血管内皮前駆細胞は,リスクが低い被験者から採取した細胞よりも in vitro での老化率がより高かった.
健常な男性では,血管内皮前駆細胞のレベルが,血管機能や累積心血管リスクの生物学的マーカーとして従来のものに代るかもしれない.これらの知見は,血液中に前駆細胞が十分存在しない場合に,内皮の損傷が心血管疾患の進行に影響を与える可能性があることを示唆している.