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February 27, 2003 Vol. 348 No. 9

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多発性大腸腺腫,古典的腺腫性ポリポーシス,MYH の生殖細胞系変異
Multiple Colorectal Adenomas, Classic Adenomatous Polyposis, and Germ-Line Mutations in MYH

O.M. Sieber and Others

背景

塩基の除去修復に関連した遺伝子である MYH の生殖細胞系変異は,多発性大腸腺腫の劣性遺伝と関連付けられてきた.罹患者から得た腫瘍では,APC 遺伝子において,グアニン–シトシン対からチミン–アデニン対へ(G:C→T:A)体細胞で塩基転換を起していた.

方 法

多発性(腺腫数:3~100 個)大腸腺腫患者 152 例と,APC 変異陰性の古典的家族性腺腫性ポリポーシス(>100 個)の発端患者 107 例において,MYH の生殖細胞系変異をスクリーニングした.患者の一部については,関連遺伝子である MTH1OGG1 における変異も分析した.腺腫については,APC の体細胞変異を検査した.

結 果

多発性腺腫患者 6 例,ポリポーシス患者 8 例が,生殖細胞系 MYH の両対立遺伝子に変異を有していた.ミスセンス変異と蛋白が短縮する変異が認められ,変異の範囲は 2 つの患者群で非常によく類似していた.両対立遺伝子変異の保有者の腫瘍では,APC の体細胞変異はすべて G:C→T:A の塩基転換であった.多発性腺腫群において,腺腫が 15 個以上ある患者の約 1/3 は,MYH の両対立遺伝子に変異を有していた.ポリポーシス群では,MYH の両対立遺伝子に変異を有する患者に重症疾患(>1,000 個)は認められなかったが,3 例は結腸外に疾患を有していた.明らかに病原性の MTH1OGG1 の変異は同定されなかった.

結 論

MYH の生殖細胞系変異は,それをもつ人に劣性の表現型や,多発性腺腫,大腸ポリポーシスの素因を与える.大腸腺腫がおよそ 15 個以上ある患者――とくに APC の生殖細胞系変異が同定されておらず,家族歴が劣性遺伝に適合する患者には,MYH の遺伝子検査は,血縁者の診断やリスクレベルを予測するうえで必要である.MYH の両対立遺伝子に変異を有する患者の治療は,古典的または腺腫数の少ない(attenuated)家族性腺腫性ポリポーシス患者の治療と同様にすべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 791 - 9. )