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September 11, 2003 Vol. 349 No. 11

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肥大型心筋症における冠微小血管機能障害と予後
Coronary Microvascular Dysfunction and Prognosis in Hypertrophic Cardiomyopathy

F. Cecchi and Others

背景

微小血管の機能障害は,ジピリダモール投与に応じた心筋血流量の不適切な増加に反映され,肥大型心筋症の特徴と認識されている.微小血管の機能障害が肥大型心筋症の予後に与える長期的な影響は不明である.陽電子放射断層法(PET)による心筋血流の定量的評価後,肥大型心筋症患者コホートを前向きに評価した.

方 法

患者 51 例(ニューヨーク心臓協会[NYHA]心機能分類 I または II)を,PET 後 8.1±2.1 年間(平均±SD)追跡した.非定型的な胸痛を有する被験者 12 例を対照とした.N-13 標識アンモニアを用いて,ベースライン時および冠血管拡張薬ジピリダモール投与後に血流量の測定を行った.その後,患者を心筋血流量の増加順に,3 つの均等な群に分けた.

結 果

ジピリダモールに対する心筋血流量の反応は,患者では対照者に比べてきわめて鈍かった(組織 1 g 当り 1.50±0.69 mL/分 対 2.71±0.94 mL/分,P<0.001).PET から 2.2~9.1 年後に患者 16 例(31%)に不良な転帰(心血管系の原因による死亡,NYHA 心機能分類 III または IV への進行,または除細動器の植込みを必要とする心室性不整脈の持続)がみられた.ジピリダモールに反応した血流量減少は,不良な転帰に強く関連していた.多変量解析により,血流量で分けた 3 群の中で血流量がもっとも少ない群の患者では,他の 2 群の患者と比較して,心血管系の原因による死亡の年齢で補正した相対ハザードが 9.6(P=0.02)であること,不良な転帰(複合エンドポイント)の相対ハザードは 20.1(P=0.003)であることが示された.具体的には,心不全で死亡した患者 4 例全員と突然死した患者 5 例中 3 例が,この血流量がもっとも少ないサブグループに属した.

結 論

肥大型心筋症患者において,微小血管機能障害の程度は臨床的悪化および死亡の独立した強力な予測因子である.重度の微小血管機能障害は,症状が軽度または無症状の患者にも存在することが多く,臨床的悪化に数年先行する可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 349 : 1027 - 35. )