September 18, 2003 Vol. 349 No. 12
原発性肺高血圧症におけるヒトヘルペスウイルス 8 の発現
Expression of Human Herpesvirus 8 in Primary Pulmonary Hypertension
C.D. Cool and Others
重症肺高血圧症は,複雑な内腔狭窄を起す血管病変で特徴付けられる疾患群から成り,遺伝的感受性のある人に発生する.重症肺高血圧症と関連する唯一のウイルス感染は,ヒト免疫不全ウイルス 1 型によるものであったが,ウイルスゲノムもウイルス抗原も病変部位に証明されていない.
散発性原発性肺高血圧症患者 16 例および二次性肺高血圧症患者 14 例から採取した肺組織標本について,ヒトヘルペスウイルス 8(HHV-8)の感染を示す証拠を検討した.HHV-8 感染は,潜伏期関連核抗原 1(LANA-1)に対する抗体を用いて免疫組織化学的に確認し,HHV-8 のウイルスサイクリン遺伝子を検出するため,肺 DNA にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を実施した.塩基配列解析も実施した.
原発性肺高血圧症患者 16 例中 10 例(62%)から採取した肺組織において,叢状病変内の細胞は,叢状病変外の細胞と同様に免疫組織化学的解析で LANA-1 が陽性であった.同じ 10 例から得た組織は,PCR 解析の結果ウイルスサイクリンを含んでいた.二次性肺高血圧症患者では,PCR で 1 例にウイルスサイクリンが証明されたが,肺組織に LANA-1 は検出されなかった.原発性肺高血圧症患者の叢状病変は,カポジ肉腫の皮膚病変と組織学的および免疫組織化学的に類似していた.
重症肺高血圧症や叢状病変形成につながる誘発因子と分子機構の範囲はどうやら広く,遺伝的要因と後天的要因の双方を含むようである.われわれの結果は,血管指向性ウイルスである HHV-8 の感染が,原発性肺高血圧症における病原的役割をもつ可能性を示唆している.