October 2, 2003 Vol. 349 No. 14
血液濾過による X 線造影剤誘発性腎症の予防
The Prevention of Radiocontrast-Agent-Induced Nephropathy by Hemofiltration
G. Marenzi and Others
X 線造影剤により誘発される腎症は,経皮的冠動脈介入の合併症として生じることがあり,入院中や長期の有病率と死亡率に関連する.腎不全患者はとくにそのリスクが高い.腎不全患者の造影剤誘発性腎症の予防における血液濾過の役割を,生理食塩液の注入と比較検討した.
冠動脈介入を受けている連続した慢性腎不全患者 114 例(血清クレアチニン値>2 mg/dL[176.8 μmol/L])を対象とした.患者を,集中治療室(ICU)での血液濾過(58 例;平均[±SD]血清クレアチニン値 3.0±1.0 mg/dL[265.2±88.4 μmol/L]),または回復室での1 mL/体重 kg/時の生理食塩液の注入(56 例;平均[±SD]血清クレアチニン値 3.1±1.0 mg/dL[274.0±88.4 μmol/dL])のいずれかに無作為に割付けた.血液濾過(体重を減少させることなく体液を 1,000 mL/時の速度で置換)および生理食塩液の注入は,冠動脈介入の 4~8 時間前に開始し,術後 18~24 時間継続した.
冠動脈介入後の血清クレアチニン値がベースラインの値より 25%以上上昇する割合は,血液濾過群患者で対照患者よりも低かった(5% 対 50%,P<0.001).対照群患者の 25%,血液濾過群患者の 3%で一時的な血液浄化療法(血液透析または血液濾過)が必要であった.院内イベントの発生率は血液濾過群で 9%,対照群で 52%であった(P<0.001).入院中の死亡率は血液濾過群で 2%,対照群で 14%であり(P=0.02),累積 1 年間死亡率はそれぞれ 10%,30%であった(P=0.01).