The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

July 10, 2003 Vol. 349 No. 2

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

脱髄の初発後の臨床的に明確な多発性硬化症の予測因子としての抗ミエリン抗体
Antimyelin Antibodies as a Predictor of Clinically Definite Multiple Sclerosis after a First Demyelinating Event

T. Berger and Others

背景

多発性硬化症患者のほとんどは,最初に臨床的に孤立した症候群を発症する.こうした患者の最大 80%で,臨床的に明確な多発性硬化症に進行するという事実にもかかわらず,疾患の経過は発症時には予測できず,長期観察や磁気共鳴画像法(MRI)による反復検査を必要とする.われわれは,臨床的に孤立した症候群を呈する患者でミエリン希突起膠細胞糖蛋白(MOG)とミエリン塩基性蛋白(MBP)に対する抗体が血清中に存在することが,臨床的に明確な多発性硬化症に転換する時期を予測するかどうかを検討した.

方 法

臨床的に孤立した症候群を示す患者で,大脳の MRI 検査が陽性で,脳髄膜液にオリゴクローナルバンドを示した患者 103 例を検討した.ベースライン時に血清標本を採取し,抗 MOG 抗体と抗 MBP 抗体をウェスタンブロット法で検査した.また,大脳の MRI で検出された病変を定量した.ベースライン時とその後 3 ヵ月ごとに,再発または疾患進行(臨床的に明確な多発性硬化症への転換と定義)に関して神経学的検査を行った.

結 果

抗 MOG 抗体と抗 MBP 抗体をもつ患者は,それらの抗体をもたない患者よりも多発性硬化症の再発の頻度が高く,再発の時期が早かった.血清抗体陰性の患者では,39 例中わずか 9 例(23%)が再発し,再発までの平均(±SD)時間は 45.1±13.7 ヵ月であった.一方,MOG と MBP の両方に対する抗体をもつ患者では,22 例中 21 例(95%)が平均 7.5±4.4 ヵ月で再発し,抗 MOG 抗体だけをもつ患者では,42 例中 35 例(83%)が 14.6±9.6 ヵ月で再発した(血清抗体陰性の患者と比較した P<0.001).臨床的に明確な多発性硬化症への進行に対する補正ハザード比は,血清抗体陰性の患者と比較した場合,両血清抗体陽性の患者では 76.5(95%信頼区間 20.6~284.6)であり,抗 MOG 抗体のみ陽性の患者では 31.6(95%信頼区間9.5~104.5)であった.

結 論

臨床的に孤立した症候群を示す患者における抗 MOG 抗体や抗 MBP 抗体の分析は,臨床的に明確な多発性硬化症への早期移行を予測する,迅速で正確,かつ安価な方法である.この知見は,多発性硬化症を示唆する脱髄症状を初発した患者のカウンセリングとケアにとって重要である可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 349 : 139 - 45. )