癌患者における再発性静脈血栓塞栓症予防のための低分子へパリンとクマリンの比較
Low-Molecular-Weight Heparin versus a Coumarin for the Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer
A.Y.Y. Lee and Others
経口抗凝固療法の使用にもかかわらず,癌患者の再発性血栓症のリスクは高い.われわれは,癌患者の再発性血栓症予防における低分子へパリンと経口抗凝固薬の有効性を比較した.
急性で症候性の近位深部静脈血栓症,肺塞栓症,またはその両方がある癌患者を,低分子へパリン(ダルテパリン)を体重 1 kg 当り 200 IU の用量で 1 日 1 回 5~7 日間皮下投与し,その後クマリン誘導体を 6 ヵ月間投与する群(目標とする国際標準比 2.5),またはダルテパリンのみを 6 ヵ月間投与する群(体重 1kg 当り 200 IU を 1 日 1 回 1 ヵ月間投与し,その後体重 1kg 当り 1 日約 150 IU を 5 ヵ月間投与)に無作為に割付けた.
6 ヵ月の試験期間中,ダルテパリン群の患者 336 例中 27 例が再発性静脈血栓塞栓症を発症し,これに対して経口抗凝固薬群では 336 例中 53 例であった(ハザード比 0.48;P=0.002).6 ヵ月後の再発性血栓塞栓症の発現率は,経口抗凝固薬群では 17%,ダルテパリン群では 9%であった.大出血(6% 対 4%)あるいはあらゆる出血(14% 対 19%)の発生率について,ダルテパリン群と経口抗凝固薬群のあいだに有意差は認められなかった.6 ヵ月の死亡率は,ダルテパリン群では 39%,経口抗凝固薬群では 41%であった.
急性静脈血栓塞栓症を併発した癌患者では,ダルテパリンは,出血のリスクを増加させることなく,再発性血栓塞栓症のリスクを低減させるうえで経口抗凝固薬よりも有効であった.