October 23, 2003 Vol. 349 No. 17
冠動脈疾患患者におけるグルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性と心血管イベント
Glutathione Peroxidase 1 Activity and Cardiovascular Events in Patients with Coronary Artery Disease
S. Blankenberg and Others
グルタチオンペルオキシダーゼ-1 やスーパーオキシドジスムターゼなどの細胞内抗酸化酵素は,活性酸素種の抑制において中心的役割を担っている.in vitro でのデータや動物モデルでの研究では,これらの酵素がアテローム性動脈硬化を予防する可能性が示唆されているが,ヒトの疾患との関連についてはほとんど明らかになっていない.
冠動脈疾患の疑いがある患者 636 例で,中央値 4.7 年(最長 5.4 年)の追跡期間で前向き研究を行い,ベースラインの赤血球グルタチオンペルオキシダーゼ-1 とスーパーオキシドジスムターゼ活性に関連した心血管イベントのリスクを評価した.
グルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性は,心血管イベントのリスクを単独でもっとも強く予測したものの 1 つであったが,これに対し,スーパーオキシドジスムターゼ活性はリスクとの関連がなかった.心血管イベントのリスクは,グルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性の強度で患者を四分位群に分けた場合の活性強度の増加と負の相関があった(傾向性に対する P<0.001).すなわちグルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性が最高四分位群の患者では,最低四分位群と比較したハザード比が 0.29 であった(95%信頼区間 0.15~0.58;P<0.001).グルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性は性別と喫煙状況の影響を受けたが,これらのサブグループにおいても予測力があった.これら 2 つの因子および他の心血管危険因子での補正後も,グルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性と心血管イベントのあいだの負の相関性はほとんど変化しなかった.
冠動脈疾患患者では,赤血球グルタチオンペルオキシダーゼ-1 の活性が低いことが,心血管イベントリスクの増加に独立して関連している.従来の危険因子に加え,グルタチオンペルオキシダーゼ-1 活性でも予後を予測できる可能性がある.さらに,グルタチオンペルオキシダーゼ-1 の活性が上昇すれば,心血管イベントのリスクが低下する可能性がある.