上皮成長因子（EGF）は，唾液腺で産生される強力な細胞分裂促進ペプチドである．EGF 浣腸が活動性左側潰瘍性大腸炎や直腸に限定された潰瘍形成（直腸炎）に対する有効な治療法であるかどうかを検討した．

英国レスター王立病院（Leicester Royal Infirmary）で無作為二重盲検臨床試験を実施し，軽度から中等度の左側潰瘍性大腸炎患者 12 例に不活性媒体 100 mL 中に EGF 5 μg を含む浣腸を，12 例に不活性媒体のみの浣腸を，14 日間毎日行った．さらに全患者が経口メサラジン 1.2 g/日の服用を開始するか，毎日 1.2 g 増量した．研究開始時および 2，4，12 週目に患者を臨床的に評価し，研究開始時および 2，4 週目に S 字結腸鏡検査と生検で評価した．主要エンドポイントは 2 週目での疾病寛解（S 字結腸鏡検査による炎症の所見がなく，St. Marks スコア 4 以下と定義）であった．副次的エンドポイントは 2，4 週目での疾病活動性の臨床上重要な改善（St. Marks スコアあるいは潰瘍性大腸炎疾病活動指数の 3 点以上の減少と定義）であった．解析は intention-to-treat 法で行った．

2 週後，EGF 浣腸を受けた患者 12 例中 10 例が寛解したのに対し，対照群では 12 例中 1 例であった（83% 対 8%，P＜0.001）．2 週目の評価では，疾病活動スコア，S 字結腸鏡検査スコアおよび組織学的スコアすべてで，EGF 群はプラセボ群より有意に優れており（すべての比較の P＜0.01），この有効性は 4 週目と 12 週目でも維持された．

この研究は，EGF 浣腸が活動性左側潰瘍性大腸炎に対する有効な治療法であることを示唆する，予備的なデータを提供している．