September 4, 2003 Vol. 349 No. 10
超早産児における酸素飽和度目標値と転帰
Oxygen-Saturation Targets and Outcomes in Extremely Preterm Infants
L.M. Askie, D.J. Henderson-Smart, L. Irwig, and J.M. Simpson
生理学的研究により,長期間にわたる酸素補給を必要とする早産児は,慢性の低酸素血症を発症する可能性があり,この低酸素血症が発育不全や発達不全の原因になる可能性があることが示されている.症例報告や対照群を設定しない観察研究により,酸素飽和度の範囲が高いほど,発育や発達の点で有利となる可能性が示唆されている.
妊娠 30 週未満で産まれ,最終月経後 32 週齢でまだ酸素補給に依存している乳児 358 例を対象に,多施設共同無作為二重盲検対照試験を行った.乳児を,91~94%(標準飽和度群)または 95~98%(高飽和度群)の機能的酸素飽和度範囲を目標とする群のいずれかに無作為に割付けた.この目標値は,酸素補給療法の期間中維持した.主要転帰は,補正月齢 12 ヵ月における発育と神経発達の指標とした.
補正月齢 12 ヵ月では,体重,身長,頭囲に両群間で有意差はなかった.重大な発達異常の発生率には,標準飽和度群と高飽和度群のあいだで有意差はなかった(それぞれ 24%,23%,P=0.85).肺疾患を原因とする死亡は,高飽和度群では 6 例であったのに対し,標準飽和度群では 1 例であった(P=0.12).高飽和度群は,標準飽和度群に比べて無作為化後からより長期間にわたり酸素補給を受けており(中央値 40 日 対 18 日,P<0.001),最終月経後 36 週齢における酸素補給への依存率も有意に高く,自宅での酸素療法の頻度も有意に高かった.
酸素補給に依存する超早産児において,より高い酸素飽和度を目標とすることは,発育や発達に関して有意な利益を与えず,診療上の負担が増加する結果となった.