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May 6, 2004 Vol. 350 No. 19

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ハーラー症候群患者における非血縁ドナーからの臍帯血移植
Cord-Blood Transplants from Unrelated Donors in Patients with Hurler's Syndrome

S.L. Staba and Others

背景

ハーラー症候群(ムコ多糖症 1 型の最重症型)は,中枢神経系の進行性変質ならびに小児期の死亡の原因となる.2 歳までに同種骨髄移植を行えば,疾患の進行が止められ寿命が延びるが,多くの患児には骨髄ドナーがいない.ハーラー症候群に罹患した幼児における,非血縁ドナーからの臍帯血移植と,全身放射線照射を含まない骨髄破壊的移植前処置レジメンの利用可能性を検討した.

方 法

1995 年 12 月~2002 年 10 月に,連続したハーラー症候群患児 20 例に対し,非血縁ドナーからの臍帯血の移植前に,ブスルファン,シクロホスファミド,抗胸腺細胞グロブリンを投与した.その後,生着,有害作用,疾患症状への効果を評価した.

結 果

臍帯血ドナーは α-L-イズロニダーゼ活性が正常で(平均細胞数 10.53×107/kg [体重]),6 つの HLA マーカーのうち,不一致は最大 3 つまでとした.好中球の生着は,移植後中央値 24 日目に認められた.5 例に,グレード 2 またはグレード 3 の急性移植片対宿主病が発症したが,広範囲に及ぶ慢性移植片対宿主病を発症した患児はいなかった.20 例中 17 例は,移植後中央値 905 日目に,ドナー型の完全キメラ状態かつ末梢血の α-L-イズロニダーゼ活性が正常な状態で生存していた(無病生存率 85%).移植により,神経認知機能が改善し,ハーラー症候群の身体的特徴が減少した.

結 論

非血縁ドナーの臍帯血は,ハーラー症候群患者への移植において優れた幹細胞の供給源であると考えられる.生着は,放射線全身照射を行わなくても持続させることが可能である.臍帯血移植はハーラー症候群の自然経過を有益な方向に変化させるため,この型の疾患に罹患した幼児で検討することは重要であるかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 1960 - 9. )