高齢者における大腿骨頸部骨折の予測因子としてのホモシステイン
Homocysteine as a Predictive Factor for Hip Fracture in Older Persons
R.R. McLean and Others
ホモシスチン尿症患者では骨粗鬆症の有病率が増加している.このことは,高濃度の血清ホモシステインがコラーゲンの架橋を妨げて骨を脆弱にし,骨粗鬆症による骨折リスクを増大させている可能性があることを示唆している.われわれは,フラミンガム研究(Framingham Study)に組み入れられた男女を対象に,総ホモシステイン濃度と大腿骨頸部骨折のリスクとの関連性を検討した.
血漿総ホモシステイン濃度の測定を目的として 1979~82 年に血液を採取した,男性 825 例および女性 1,174 例(年齢 59~91 歳)について検討を行った.検体を採取した時点から 1998 年 6 月までの期間,大腿骨頸部骨折の発症について参加者を追跡した.総ホモシステイン濃度の四分位群ごとに,大腿骨頸部骨折の年齢調整発生率を男女別に算出した.Cox 比例ハザード回帰モデルを用いて,ホモシステイン濃度の四分位群ごとのハザード比を算出した.
血漿総ホモシステイン濃度の平均(±SD)は,男性 13.4±9.1 μmol/L,女性 12.1±5.3 μmol/L であった.追跡期間の中央値は,男性 12.3 年,女性 15.0 年であった.大腿骨頸部骨折は,男性 41 例,女性 146 例で発生した.1,000 人‐年当りの大腿骨頸部骨折の年齢調整発生率は,総ホモシステイン濃度の最低四分位群から最高四分位群まで順に,男性では 1.96(95%信頼区間 0.52~3.41),3.24(0.97~5.52),4.43(1.80~7.07),8.14(4.20~12.08),女性では 9.42(5.72~13.12),7.01(4.29~9.72),9.58(6.42~12.74),16.57(11.84~21.30)であった.男女とも,最高四分位群に属する人は,最低四分位群に属する人よりも大腿骨頸部骨折のリスクが高く,リスクは,男性でおよそ 4 倍,女性で 1.9 倍であった.
これらの知見は,ホモシステイン濃度は,高齢者の大腿骨頸部骨折における重大な危険因子であることを示唆している.ホモシステイン濃度は,食事療法による介入で容易に改善が可能である.