冠動脈ステント留置後の葉酸療法とステント内再狭窄
Folate Therapy and In-Stent Restenosis after Coronary Stenting
H. Lange and Others
ホモシステイン濃度を低下させるためのビタミン療法が,最近では冠動脈形成術後の再狭窄の防止に推奨されている.葉酸と,ビタミン B6,ビタミン B12 の併用(葉酸療法と呼ばれる)によって,冠動脈ステント留置後の血管造影検査で認められる再狭窄のリスクにどのような影響が生じるかを,二重盲検多施設共同試験で検討した.
冠動脈ステント留置術が成功した患者 636 例を対象とし,葉酸 1 mg,ビタミン B6 5 mg,ビタミン B12 1 mg を静脈内投与し,その後葉酸 1.2 mg,ビタミン B6 48 mg,ビタミン B12 60 μg を 6 ヵ月連日経口投与する群,またはプラセボ投与群に無作為に割付けた.血管造影上のエンドポイント(最小血管径,遠隔期血管内腔狭小化,再狭窄率)を,定量的冠動脈造影により 6 ヵ月後に評価した.
追跡調査の時点で,葉酸群では,プラセボ群と比較して最小血管径の平均(±SD)が有意に小さく(1.59±0.62 mm 対 1.74±0.64 mm,P=0.008),遠隔期血管内腔狭小化の程度が大きかった(0.90±0.55 mm 対 0.76±0.58 mm,P=0.004).葉酸群では,プラセボ群よりも再狭窄率が高く(34.5% 対 26.5%,P=0.05),標的血管の血行再建術が繰り返し必要となる患者の割合が高かった(15.8% 対 10.6%,P=0.05).葉酸療法により,女性患者,糖尿病患者,そしてベースライン時のホモシステイン濃度が顕著に高かった(15 μmol/L 以上)患者を除くすべてのサブグループにおいて,再狭窄のリスクに有害な影響が認められた.
これまでの所見に反し,冠動脈ステント留置術後に葉酸,ビタミン B6,ビタミン B12 を投与することで,ステント内再狭窄のリスクと標的血管の血行再建術の必要性が高まる可能性がある.