February 26, 2004 Vol. 350 No. 9
スイスにおける経鼻不活化インフルエンザワクチンの使用とベル麻痺のリスク
Use of the Inactivated Intranasal Influenza Vaccine and the Risk of Bell's Palsy in Switzerland
M. Mutsch and Others
経鼻不活化インフルエンザワクチンの導入後,ベル麻痺が 46 例報告された.このワクチンはスイスでのみ使用された.
症例対照研究と症例集積解析を実施した.スイスのドイツ語圏のすべてのプライマリケア医,耳鼻咽喉科医,神経科医に対し,2000 年 10 月 1 日~2001 年 4 月 30 日に診断された成人のベル麻痺症例を同定するよう依頼した.各医師には,それぞれのベル麻痺患者に対し,年齢,来院日,および診察した医師をマッチさせた対照患者 3 例を選んでもらった.ワクチン接種情報は医師から提供された.
計 773 例のベル麻痺患者が同定された.評価可能であった 412 例(53.3%)中 250 例(60.7%)を組み入れ,対照患者 722 例とマッチさせた.残りの患者 162 例は対照がいなかった.症例対照研究では,ベル麻痺患者 68 例(27.2%)と対照者 8 例(1.1%)が経鼻ワクチン接種を受けていたことが明らかになった(P<0.001).非経口ワクチンと対照的に,経鼻ワクチンはベル麻痺のリスクを有意に増加させた(補正オッズ比 84.0,95%信頼区間 20.1~351.9).控えめに推定しても,ベル麻痺の相対リスクは対照群のリスクの 19 倍と考えられ,これはワクチン接種後 1~91 日内でワクチン接種者 10,000 例につき 13 例多いことに相当する.症例集積解析では,もっともリスクの高い期間はワクチン接種後 31~60 日であった.
この研究から,スイスで用いられた経鼻不活化インフルエンザワクチンとベル麻痺のあいだに強い関連性があることが示唆される.このワクチンはもはや臨床で使用されていない.