The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

September 16, 2004 Vol. 351 No. 12

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

自己口腔粘膜上皮から組織工学的に作製した培養上皮細胞シート移植による角膜再生
Corneal Reconstruction with Tissue- Engineered Cell Sheets Composed of Autologous Oral Mucosal Epithelium

K. Nishida and Others

背景

外傷や疾患により角膜上皮幹細胞が完全に消失すると,重度の角膜混濁が生じ視力が著しく低下する.同種角膜移植は拒絶反応を回避できず,その長期予後は十分でない.近年開発された自己角膜上皮幹細胞移植は,免疫抑制を必要としないが,片眼のみが傷害されている患者にのみ適応可能である.しかし実際には対象となる患者の多くが両眼の角膜上皮幹細胞を完全に消失しており,自己角膜上皮幹細胞移植の適用とはならない.角膜上皮幹細胞ではなく自己口腔粘膜上皮幹細胞を利用する,新規角膜上皮再生治療法の臨床応用について検討を行った.

方 法

両眼の角膜上皮幹細胞が完全に欠損している患者 4 例において,採取した 3 mm 四方の口腔粘膜組織から単離した上皮細胞を,マイトマイシン C で処理した 3T3 フィーダー細胞と共に温度応答性培養皿上で 2 週間培養し,生体外で組織工学的に培養上皮細胞シートを作製した.角膜表面から結膜瘢痕組織を外科的に除去したあと,低温処理のみで培養皿から細胞シートを回収し,露出させた角膜実質(各患者の片眼)に縫合せずに直接移植した.

結 果

治療を受けた 4 眼すべてにおいて,角膜表面は 1 週間以内に上皮組織により完全に再建された.4 眼すべてで角膜の透明性が回復し,術後の視力が著明に改善した.平均 14 ヵ月の追跡期間中,角膜表面はいずれも透明性を保持し,合併症はみられなかった.

結 論

自己口腔粘膜上皮幹細胞を細胞源とし,担体の利用や縫合を必要としない細胞シート移植は,両眼表面に重度の障害がある患者の新たな再生医療となりうる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 1187 - 96. )