October 14, 2004 Vol. 351 No. 16
急性肺水腫の発症機序における虚血性僧帽弁閉鎖不全症の役割
The Role of Ischemic Mitral Regurgitation in the Pathogenesis of Acute Pulmonary Edema
L.A. Pierard and P. Lancellotti
急性僧帽弁閉鎖不全症は肺水腫を引き起す可能性があるが,動的状態である慢性虚血性僧帽弁閉鎖不全症が肺水腫の発症機序に果す役割は,依然として明らかにされていない.
急性肺水腫と左室収縮機能障害をきたした患者 28 例(平均 [±SD] 年齢,65±11 歳)と,急性肺水腫の既往がない患者 46 例を前向きに検討した.ベースライン時の特性は両群で一致していた.患者は,運動中に定量的ドップラー心エコー検査を受けた.運動時にみられる左室容積,駆出率,僧帽弁逆流量,有効弁口面積,右房・右室圧較差の変化について,急性肺水腫の患者と急性肺水腫を発症していない患者を比較した.
両群の臨床特性とベースライン時に行った心エコー検査の特性は類似していた.運動時の心拍数,収縮期血圧,左室容積の変化も同程度であった.単変量解析では,最近肺水腫をきたした患者は,肺水腫を発症していない患者と比較して,僧帽弁逆流量(26±14 mL 対 5±14 mL,P<0.001),有効弁口面積(16±10 mm2 対 2±9 mm2,P<0.001),右房・右室圧較差(29±10 mmHg 対 13±11 mmHg,P<0.001)の値が大きかった.多変量解析では,運動時の有効弁口面積(P<0.001),右房・右室圧較差(P=0.001),左室駆出率(P=0.02)の変化は,肺水腫を最近発症したことと独立して関連していた.
左室収縮機能障害の患者において,急性肺水腫は,虚血性僧帽弁逆流の動的変化と,その結果生じる肺動脈圧の上昇に関連している.