November 18, 2004 Vol. 351 No. 21
急性虚血性脳卒中に対する超音波増強全身性血栓溶解療法
Ultrasound-Enhanced Systemic Thrombolysis for Acute Ischemic Stroke
A.V. Alexandrov and Others
閉塞した中大脳動脈に残る頭蓋内の血流を標的とした経頭蓋超音波ドップラー検査は,血栓が組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)に曝露するのを促進する可能性がある.われわれの目的は,超音波検査により,t-PA の血栓溶解作用を安全に高めることが可能かどうかを明らかにすることであった.
中大脳動脈の閉塞による急性虚血性脳卒中を起した患者全員に,症状発現後 3 時間以内に t-PA の静脈内投与を行った.その後,2 MHz の継続的経頭蓋超音波ドップラー検査(超音波群)またはプラセボ検査(対照群)に無作為に割付けた.主要複合エンドポイントは,経頭蓋超音波ドップラー検査で判定した完全な再開通または顕著な臨床的回復とした.副次的エンドポイントは,24 時間の時点での回復,3 ヵ月の時点での良好な転帰,3 ヵ月の時点での死亡とした.
患者計 126 例を,継続的超音波検査(63 例)またはプラセボ検査(63 例)に無作為に割付けた.超音波群の 3 例と対照群の 3 例で,症候性頭蓋内出血が起った.t-PA のボーラス投与後 2 時間以内に完全な再開通または顕著な臨床的回復を示した患者は,試験群で 31 例(49%)であったのに対し,対照群では 19 例(30%)であった(P=0.03).治療から 24 時間後,追跡検査の適格患者では,超音波群の 24 例(44%)と対照群の 21 例(40%)が顕著な臨床的回復を示した(P=0.7).3 ヵ月の時点で,追跡検査の適格患者では,超音波群の 53 例中 22 例(42%),対照群の 49 例中 14 例(29%)が良好な転帰(ランキンスケールでスコア 0~1 と定義)を示した(P=0.20).
虚血性脳卒中患者において,継続的に行う経頭蓋ドップラー検査は,プラセボ検査と比較して t-PA による動脈の再開通率を増大させたが,脳卒中からの回復率の上昇に有意な差異はみられなかった.