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July 29, 2004 Vol. 351 No. 5

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異型 Carney 症候群に関連する周産期のミオシン重鎖の変異
Mutation of Perinatal Myosin Heavy Chain Associated with a Carney Complex Variant

M. Veugelers and Others

背景

遺伝性 Carney 症候群では,家族性心臓粘液腫が生じる.PRKAR1A 遺伝子の変異により Carney 症候群が引き起される可能性があるが,Carney 症候群には遺伝的多様性がある.遠位関節拘縮(開口障害–仮性屈指症症候群)を併う異型 Carney 症候群の原因を明らかにすることを目的として,臨床研究ならびに遺伝的研究を行った.

方 法

家族性心臓粘液腫および開口障害‐仮性屈指症症候群を呈する大きな家系(家系 1)を同定し,開口障害と仮性屈指症を呈する 2 家系と共に臨床評価を行った.この異型 Carney 症候群の遺伝子座を決定するため,マイクロサテライト多型を用いて遺伝子連鎖解析を行った.Carney 症候群の家系および開口障害–仮性屈指症症候群の家系における疾患の遺伝的原因を明らかにするため,候補遺伝子のポジショナル・クローニングと変異解析を行った.

結 果

臨床評価で,家系 1 では,Carney 症候群と開口障害–仮性屈指症症候群が共に認められることが明らかになった.また遺伝子解析から,異型 Carney 症候群は染色体 17p12-p13.1 と連鎖していることが明らかになった(最大多点ロッドスコア 4.39).遺伝子配列解析から,周産期のミオシン重鎖遺伝子(MYH8)にミスセンス変異(Arg674Gln)があることが明らかになった.開口障害‐仮性屈指症症候群の 2 家系にも同じ変異が認められた.Arg674 は進化的に高度に保存され,周産期のミオシン頭部のアクチン結合ドメインに局在し,ATP 結合部位に近接している.今回,関節拘縮の併発がない心臓粘液腫症候群患者において,非同義の MYH8 遺伝子多型が同定された.

結 論

われわれは,家族性心臓粘液腫と遠位関節拘縮を呈する新たな心臓–手の症候群の特徴を述べ,この障害が MYH8 遺伝子の創始者変異(founder mutation)により引き起されることを明らかにした.今回の知見は,平滑筋の発達と心臓の腫瘍形成に周産期のミオシンが果す,新たな役割を明らかにするものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 460 - 9. )