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August 5, 2004 Vol. 351 No. 6

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急性 T 細胞性リンパ芽球性白血病における Smad3 の欠失
Loss of Smad3 in Acute T-Cell Lymphoblastic Leukemia

L.A. Wolfraim and Others

背景

トランスフォーミング増殖因子 β(TGF-β)受容体とそのシグナル伝達を仲介する分子は,重要な腫瘍抑制経路を構成している.これら仲介分子の 1 つである Smad3 が,リンパ系腫瘍の病因にどのような役割を果しているかは明らかにされていない.

方 法

急性白血病の小児 19 例(T 細胞性急性リンパ芽球性白血病 [ALL] 10 例,前駆 B 細胞性 ALL7 例,急性非リンパ芽球性白血病 [ANLL] 2 例)から診断時に採取した白血病細胞で,細胞中の Smad3 のメッセンジャー RNA(mRNA)と蛋白を測定した.SMAD3 遺伝子(MADH3)の 9 つのエクソンすべてで配列を決定した.Smad3 の対立遺伝子の一方または両方を不活性化したマウスを用いて,正常な T 細胞の TGF-β に対する反応に Smad3 が果す役割と,癌抑制遺伝子 p27Kip1 の両方の対立遺伝子を欠損したマウスにおける,白血病の自然発症に対する感受性に Smad3 が果す役割を評価した.

結 果

Smad3 蛋白は,T 細胞性 ALL では存在しなかったが,前駆 B 細胞性 ALL と ANLL では存在した.T 細胞性 ALL では MADH3 遺伝子に突然変異は認められず,Smad3 mRNA の量は,T 細胞性 ALL と正常 T 細胞で同程度であった.マウスにおいて,Smad3 の一方の対立遺伝子の欠失は,正常 T 細胞の増殖における TGF-β の抑制作用を減弱させ,p27Kip1 のホモ接合性不活性化と共に T 細胞性白血病の発症を促進させるものであった.

結 論

Smad3 蛋白の欠失は,小児の T 細胞性 ALL に特異的である.Smad3 発現の減少と p27Kip1 の欠失は,マウスにおいて,T 細胞性白血病の発症促進に相乗的に働く.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 552 - 9. )