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August 5, 2004 Vol. 351 No. 6

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喘息患者の気管支平滑筋細胞における C/EBPα とグルココルチコイド受容体の相互作用の障害
Dysfunctional Interaction of C/EBPα and the Glucocorticoid Receptor in Asthmatic Bronchial Smooth-Muscle Cells

M. Roth and Others

背景

喘息患者では,気管支平滑筋細胞の増殖が亢進することで,気道の筋量が増す可能性がある.喘息のない人の気管支平滑筋細胞では,グルココルチコイドの増殖抑制作用に,グルココルチコイド受容体と CCAAT/エンハンサー結合蛋白 α(C/EBPα)から成る複合体が介在している.喘息患者と喘息のない人の気管支平滑筋細胞において,グルココルチコイドの細胞増殖およびインターロイキン-6 合成に対する抑制作用を制御している,シグナル伝達経路について検討を行った.

方 法

喘息患者 20 例,肺気腫患者 8 例,対照被験者 26 例に由来する細胞から,気管支平滑筋細胞株を樹立した.細胞増殖は,細胞計数と [3H] チミジンの取り込みにより測定した.シグナル伝達は,DNA ゲルシフトアッセイ,ゲルスーパーシフトアッセイ,免疫ブロット法,C/EBPα アンチセンスオリゴヌクレオチド,ヒト C/EBPα 発現ベクターを用いて検討した.インターロイキン-6 の放出は,酵素免疫測定法で測定した.

結 果

喘息患者由来の気管支平滑筋細胞と喘息のない対照被験者由来の細胞の両方で,グルココルチコイドはグルココルチコイド受容体を活性化し,血清で誘発したインターロイキン-6 の分泌を抑制した.しかし,グルココルチコイドにより気管支平滑筋細胞の増殖が抑制されたのは,喘息のない対照被験者由来の細胞のみであった.免疫ブロット法により,喘息のない人の気管支平滑筋細胞ではすべてに C/EBPα 蛋白が検出されたが,喘息患者の気管支平滑筋細胞では検出されなかった.一方,リンパ球では,C/EBPα 蛋白は両群に由来する細胞で発現していた.C/EBPα アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはグルココルチコイド受容体阻害薬のミフェプリストン(mifepristone)を投与すると,喘息のない人の気管支平滑筋細胞において,グルココルチコイドの増殖抑制作用が逆転した.喘息患者の気管支平滑筋細胞にヒト C/EBPα 発現ベクターを一過性にトランスフェクトすると,2 種類の蛋白が発現し,続いてグルココルチコイドを投与すると細胞増殖が抑制された.

結 論

今回の結果から立てられる仮説は,細胞型特異的な C/EBPα の欠損が喘息患者由来の気管支平滑筋細胞の増殖亢進に関与しており,そのことからグルココルチコイドが in vitro で増殖を抑制しないことに説明が付くというものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 351 : 560 - 74. )