早期乳癌の 70 歳以上の女性において，腫瘤摘出に加えタモキシフェン投与を行う治療法が，腫瘤摘出後にタモキシフェン投与と放射線療法を行う方法と同程度有効であるかどうかは明らかではない．

1994 年 7 月～1999 年 2 月の期間に，病期 I 期（TNM 分類で T1N0M0）のエストロゲン受容体陽性の乳癌で，腫瘤摘出を受けた 70 歳以上の女性 636 例を，タモキシフェン投与＋放射線療法（317 例）またはタモキシフェン投与単独（319 例）に無作為に割付けた．主要エンドポイントは，局所再発または領域再発，再発に対して乳房切除を行った頻度，乳癌に関連した生存率，遠隔転移までの期間，全生存率とした．

両群間で有意差がみられたのは，5 年の時点での局所または領域の再発率（タモキシフェン＋放射線照射群 1%，タモキシフェン投与単独群 4%，P＜0.001）のみであった．局所再発に対する乳房切除の割合，遠隔転移，5 年の時点での全生存率（タモキシフェン＋放射線照射群 87%，タモキシフェン投与単独群 86%，P＝0.94）には，両群間で有意差はなかった．美容上の結果と有害事象に対する評価は，医師・患者ともに，タモキシフェン＋放射線照射群のほうがタモキシフェン投与単独群よりも低かった．

腫瘤摘出に加えタモキシフェン投与のみを行う補助療法は，エストロゲン受容体陽性の早期乳癌を有する 70 歳以上の女性において，治療の選択肢として妥当である．