March 24, 2005 Vol. 352 No. 12
ST 上昇を伴う心筋梗塞に対するアスピリンと血栓溶解療法の併用へのクロピドグレルの追加
Addition of Clopidogrel to Aspirin and Fibrinolytic Therapy for Myocardial Infarction with ST-Segment Elevation
M.S. Sabatine and Others
ST 上昇を伴う心筋梗塞に対して血栓溶解療法を受けている患者の多くでは,梗塞責任動脈で再灌流障害や再閉塞が起り,合併症や死亡のリスクが上昇する原因となっている.
ST 上昇心筋梗塞の発症から 12 時間以内に受診した,年齢が 18~75 歳の患者 3,491 例を組み入れ,クロピドグレル(clopidogrel)群(負荷量 300 mg,その後 75 mg を 1 日 1 回)またはプラセボ群に無作為に割付けた.患者には,血栓溶解薬とアスピリン,そして適宜ヘパリン(体重に応じた量)を投与し,試験薬の投与開始から 48~192 時間後に血管造影検査を行うよう計画した.有効性に関する主要エンドポイントは,血管造影検査で認められる梗塞責任動脈の閉塞(TIMI 灌流度 [Thrombolysis in Myocardial Infarction flow grade] が 0 または 1 と定義),死亡,血管造影検査前の再発性心筋梗塞から成る複合エンドポイントとした.
有効性に関する主要エンドポイントに達した割合は,プラセボ群で 21.7%,クロピドグレル群で 15.0%であった.これは,割合の絶対的減少が 6.7 パーセントポイントで,クロピドグレル療法を行った場合にエンドポイントのオッズが 36%減少したことを示している(95%信頼区間 24~47%,P<0.001).クロピドグレル療法により,30 日の時点までに,心血管系の原因による死亡,再発性心筋梗塞,緊急の血管再生が必要となる再発性虚血から成る複合エンドポイントのオッズが 20%低下した(14.1%から 11.6%へ低下,P=0.03).大出血や頭蓋内出血の発生率は,両群でほぼ同等であった.
ST 上昇を伴う心筋梗塞を発症し,アスピリンと標準的な血栓溶解療法を受けている 75 歳以下の患者では,クロピドグレルを追加すると,梗塞責任動脈の開存率が改善し,虚血性合併症が減少した.
(本論文は,2005 年 3 月 4 日 www.nejm.org で発表された.)