April 28, 2005 Vol. 352 No. 17
肺塞栓が疑われる症例におけるマルチスライスコンピュータ断層撮影
Multidetector-Row Computed Tomography in Suspected Pulmonary Embolism
A. Perrier and Others
シングルスライスコンピュータ断層撮影(CT)は,肺塞栓に対する感度が低く,下肢の静脈圧迫超音波検査と併せて行わなければならない.下肢の超音波検査を行わずに D-ダイマー測定とマルチスライス CT を用いて,肺塞栓を安全に除外診断できるかどうかを評価した.
3 ヵ所の教育病院の救急科から,臨床的に肺塞栓症が疑われる連続した患者 756 例を組み入れ,標準化された一連の診断法に従って症例を管理した.すべての患者を 3 ヵ月間追跡した.
756 例中 194 例(26%)で肺塞栓が検出された.臨床的に肺塞栓を有する確率が高い患者 82 例のうち,マルチスライス CT により 78 例で肺塞栓が確認された.1 例は近位に深部静脈血栓を有していたが,CT スキャンでは肺塞栓は確認されなかった.肺塞栓の確率が高い患者を除く 674 例のうち,232 例(34%)では D-ダイマー検査の結果が陰性であり,追跡期間中にイベントもみられなかった.また,CT では 109 例に肺塞栓が確認された.CT と超音波検査の結果が陰性であった 318 例のうち,3 例に明らかな血栓塞栓イベントがみられ,2 例は肺塞栓と考えられる原因で追跡期間中に死亡した(3 ヵ月の血栓塞栓リスク 1.7%,95%信頼区間 0.7~3.9).2 例には近位に深部静脈血栓が認められたが,CT スキャンの結果は陰性であった(リスク 0.6%,95%信頼区間 0.2~2.2).超音波検査は行わず,D-ダイマー検査とマルチスライス CT が肺塞栓を除外するために使用できる唯一の検査であるとすると,肺塞栓が認められない患者における 3 ヵ月間の血栓塞栓のリスクは,全体で 1.5%(95%信頼区間 0.8~3.0)であったと考えられる.
われわれのデータは,下肢の超音波検査を行わずに D-ダイマー検査とマルチスライス CT に基づいて肺塞栓を除外する診断法が,臨床的に利用できる可能性を示している.この方法を導入する前に,より大規模なアウトカム研究を行う必要がある.