September 15, 2005 Vol. 353 No. 11
急性冠症候群の管理における早期侵襲的治療と選択的侵襲的治療の比較
Early Invasive versus Selectively Invasive Management for Acute Coronary Syndromes
R.J. de Winter and Others
現行のガイドラインでは,心筋トロポニン T 値の上昇が認められる非 ST 上昇型急性冠症候群の患者には,早期侵襲的治療を推奨している.しかし,無作為試験で死亡率の全体的な低下は示されておらず,先行試験における心筋梗塞発生率の低下の程度は,心筋梗塞の定義によって異なっていた.
非 ST 上昇型の冠動脈症候群で,胸痛と心筋トロポニン T 値の上昇(≧0.03 μg/L)が認められ,入院時に虚血の心電図所見があるか,冠動脈疾患の既往がある患者 1,200 例を,早期侵襲的治療またはより保存的な(選択的侵襲的)治療のいずれかに無作為に割付けた.患者には,アスピリンを連日,エノキサパリン(enoxaparin)を 48 時間投与し,経皮的冠動脈形成術のさいにアブシキシマブ(abciximab)を投与した.クロピドグレル(clopidogrel)の使用と積極的脂質低下療法が推奨された.主要エンドポイントは,死亡,非致死的心筋梗塞,無作為化から 1 年以内の狭心症による再入院の複合とした.
主要エンドポイントの累積率は,早期侵襲的管理群で 22.7%,選択的侵襲的管理群で 21.2%と推定された(相対リスク 1.07,95%信頼区間 0.87~1.33,P=0.33).死亡率は 2 群間で同等であった(2.5%).早期侵襲的管理群では,心筋梗塞の頻度が有意に高かったが(15.0% 対 10.0%,P=0.005),再入院の頻度は低かった(7.4% 対 10.9%,P=0.04).
心筋トロポニン T 値の上昇が認められる非 ST 上昇型の急性冠症候群患者において,最適な内科的治療の実施下では,早期侵襲的治療が選択的侵襲的治療よりも優れているということは示されなかった.