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August 25, 2005 Vol. 353 No. 8

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増殖糖尿病網膜症における網膜血管新生因子としてのエリスロポエチン
Erythropoietin as a Retinal Angiogenic Factor in Proliferative Diabetic Retinopathy

D. Watanabe and Others

背景

血管内皮増殖因子(VEGF)は,網膜血管新生の主要な媒介因子であるが,VEGF の阻害だけでは網膜血管新生を防ぐには不十分である.したがって,他の強力な虚血誘導性血管新生因子が存在することが考えられる.エリスロポエチンは,血管新生作用をもつが,眼科領域の血管新生における役割については確認されていない.

方 法

患者 144 例の硝子体液について,ラジオイムノアッセイおよび酵素免疫測定法(ELISA)を用いて,エリスロポエチン濃度と VEGF 濃度を測定した.硝子体の血管増殖能は,in vitro の網膜内皮細胞の増殖能を,可溶性エリスロポエチン受容体の存在下で測定し評価した.さらに,虚血誘導性の網膜血管新生のマウスモデルを用いて,in vivo でのエリスロポエチンの発現および制御を評価した.

結 果

硝子体のエリスロポエチン濃度の中央値は,増殖糖尿病網膜症患者 73 例のほうが,糖尿病でない患者 71 例よりも有意に高かった(464.0 mIU/mL 対 36.5 mIU/mL,P<0.001).VEGF 濃度の中央値もまた,網膜症患者のほうが,糖尿病でない患者よりも有意に高かった(345.0 pg/mL 対 3.9 pg/mL,P<0.001).多変量ロジスティック回帰分析では,エリスロポエチンと VEGF がそれぞれ独立に増殖糖尿病網膜症と関連しており,エリスロポエチンのほうが VEGF よりも増殖糖尿病網膜症の存在と強く関連していることが示された.エリスロポエチンおよび VEGF の遺伝子発現レベルは,マウスの虚血性網膜において増加しており,エリスロポエチンを抑制すると,in vivo での網膜血管新生,ならびに糖尿病網膜症患者の硝子体刺激による in vitro での内皮細胞増殖が阻害される.

結 論

この結果から,エリスロポエチンは,増殖糖尿病網膜症の網膜血管新生において,VEGF と独立に作用する強力な虚血誘導性血管新生因子であることが示唆される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 353 : 782 - 92. )