April 27, 2006 Vol. 354 No. 17
急性呼吸窮迫症候群患者における肺の再膨張
Lung Recruitment in Patients with the Acute Respiratory Distress Syndrome
L. Gattinoni and Others
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では,呼気終末陽圧換気(PEEP)を用いて虚脱を起す可能性のある肺胞の開存を維持することで,人工呼吸器による肺傷害が減少する可能性がある.PEEP の効果は,肺が再膨張可能かどうかによって異なるため,われわれは,コンピュータ断層撮影(CT)で示される含気量の回復が見込める肺組織の割合と,PEEP の臨床的・生理的作用との関連を検討するためにこの研究を実施した.
急性肺傷害または ARDS の患者 68 例に対し,呼吸抑制下で,気道内圧 5 cm H2O,15 cm H2O,45 cm H2O にて全肺 CT を施行した.含気量の回復が見込める肺組織の割合は,気道内圧 5~45 cm H2O で含気量が回復した肺組織の割合と定義した.
含気量の回復が見込める肺組織の割合は,肺重量の平均(±SD)13±11%と,患者によって大きく異なっており,PEEP 施行後に正常な含気量を維持した肺組織の割合とのあいだに高い相関がみられた(r2=0.72,P<0.001).平均して肺組織の 24%で再膨張が得られなかった.含気量の回復が見込める肺組織の割合が高かった(中央値の 9%を超える)患者では,含気量の回復が見込める肺組織の割合が低かった患者に比べ,総肺重量が大きく(P<0.001),酸素化(動脈血酸素分圧の吸気酸素分画に対する比率と定義)(P<0.001)と呼吸器系のコンプライアンス(P=0.002)が不良であり,死腔の割合(P=0.002)と死亡率(P=0.02)が高かった.生理学的変数の組み合せから,含気量の回復が見込める肺組織の割合が中央値より高いか低いかが,感度 71%,特異度 59%で予測された.
ARDS では,含気量の回復が見込める肺組織の割合は大きく異なり,PEEP に対する反応とのあいだに強い相関が認められる.